今、旅館・ホテルは激変の時代を迎えていると思う。業界のニュースを見れば、独自のコンセプトの新しい宿泊施設が相次いでオープンしている。今後、開業予定の施設についても数多く報じられている。
首都圏では2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を目指しての開業も多いようだが、インバウンド客が2千万人を超えたことを考え合わせると、インターナショナルなニーズに対応する施設はこれからも増えていくのではないかと思う。
地域特性を巧みに取り込んだ新たな施設へとリニューアルする宿も多い。国の地方創生策や地域の活性策とリンクした新たな集客の試みも目にする。
この欄でも何度もお伝えした通り、「土地の力を活用すること」はこれからの施設づくりにおいて何よりも不可欠のテーマだと思う。ぜひ、積極的に取り組んでいただきたいと切に願っている。
地域の中での宿のあり方や競争形態も、同様に大きく変わっていくと思う。注目すべきは世界的なホテルチェーンが旅館街にも進出し始めていることだ。新しい施設が誕生すれば、人々の関心はどうしてもそちらに向かう。戦々恐々としている宿も多いのではないかと思う。
また、異業種からの参入も増えている。個人ではなく、組織で参入している上に、旅館・ホテルの固定概念にこだわらない発想で新しい宿を模索している。有名レストランがホテルビジネスへと進出していることも話題になった。
話題の施設をみると、ホテルは旅館の良さやもてなしをソフト・ハード両面に取り込もうとしているし、旅館はホテルの良さを取り込もうとしていることが分かる。和洋がクロスオーバーしてきている。
さらに、外国籍のオーナーが国境を越え、日本というマーケットで宿のビジネスを展開している例もある。温泉や食事など、日本人以上に日本の良さを理解し、積極的に世界へとアピールしている。
設備面でもインバウンドニーズを見越して、多言語翻訳機など、サービスインフラを大きく変えるソリューションが続々登場してきている。今まで予測もつかなかった強力な競合相手やツールが身近に登場し、耳目を集めているが、このような状況をどう思うだろうか。
受難といったら言い過ぎのような気もするが、このように日本の宿は今、過渡期にあることは間違いないと思う。
東京オリンピックは長期的なニーズをもたらすものではない。その先のビジョンを定めて、独自のソフトとハードの開発を考えるべきだと思う。そのための協力は惜しまないつもりでいる。(談)