【道標 経営のヒント106】人出不足と外国人雇用 石井敏子


 最近、人手不足という話をよく聞く。行燈旅館も例外ではない。正社員の1人が退職するに当たり、正社員とアルバイトの新規募集を今春行った。

 行燈の正社員はゲストルーム階上にある独身寮付きなので、応募者は20代から30代が中心だ。15~16年前だったら2週間の求人広告掲載で、寮付きの正社員の募集1人に50人くらいの募集があった。その正社員の応募反応は年々鈍くなり、今年春先のアルバイト募集に関しては10人しか応募がなかった。私も人手不足を痛感することとなった。

 創業以来変わってきた点は、応募者の中に中国、台湾の方が増えてきた点だ。外国人対象のホテル業のノウハウを学びたいという動機があるのだろうか。

 旅館業の人手不足の理由は、働き盛りの若年層の絶対数の減少と、都内のホテル、ゲストハウスなどの宿泊施設の増加が考えられる。

 14年前の創業当初を思い出した。その当時、簡易宿泊所も経営していたので、長期滞在していたアメリカ人の男性宿泊者の中にとても良い人がいて「宿で働きたい」と言ってきた。こちらも人材不足であったので、英語を母国語としているスタッフがいるのは外国人を顧客としているホテルにとってはぜひとも確保したい人材だった。

 当時、外国人雇用に関しては何も情報を持っておらず、手探りで、真っ先に入国管理局に彼と共に相談に出かけた。

 「申請書類を作成し提出してください」という指導のもと、提出し審査官に合計3回ほど相談したが、結局「4年生大学を出ていない」「通訳としてはフロント業務だったら日本人でも英語ができる人はいる」「通訳業としては興行などを行う芸人、選手につく通訳士だったら必要だと認められるがホテル業は駄目」という答えが最終結果だった。納得がいかず問いただしたが、「そんな簡単な答えしか用意されていないのだったら、何度も足を運んで相談したのが間違いだった」というのが素直な感想だった。

 それ以来、外国人雇用は諦めてきた。最近若い経営者の中にアルバイトで雇っていた中国人留学生を受け入れ先学校と弁護士と連携し、在留資格を得て正社員として働いてもらっているという話を聞いた。

 これからオリンピックに向けて質の高いおもてなしを実現するために必要なのは生産性向上ではない。

 長時間のフライト、通じない言葉、大きな荷物…。不安でいっぱいのゲストを宿で心からもてなすことと生産性は両立しない。働く人の絶対数が不足しつつある現在、われわれのような、生産性の低さを内在的に抱え込むサービス業における外国人労働者の柔軟な受け入れを政府に強く求めたい。

 
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