前回に引き続き、すぐに取り組める人材採用・定着化のための対策テクニックを紹介しよう。人材不足のために、せっかくの増収のチャンスを逃してしまったり、口コミ点数が下がってしまったり、再生プランが達成できなくなったりという問題が日本各地で起きている。検討に時間を費やすのではなく、今できることをすぐに取り組もう。
■各種研修制度を充実させる
若者が就職先を選択する際に、重視するポイントとして常に上位に位置づけられるのが、教育研修制度が充実しているかどうかである。向上心の強い優秀な若者に応募してもらうために、ぜひ制度の充実に取り組みたい。
旅館・ホテルの研修制度づくりで気をつけたいのが接客研修に偏り過ぎないことである。おもてなしやマナーは日常業務を行うにあたって必須のスキルであるが、それだけで旅館・ホテルの幹部スタッフを育てることはできない。社会人として成長するための基盤となる研修科目を設置することが望ましい。
現場の改善活動やアクションプランを円滑に実行していくのであれば、ロジカルシンキング(問題発見・解決能力)を身につけるための研修をおすすめしたい。業務効率や顧客満足度、売り上げ利益を低下させている原因を見抜き、最適な解決策を考えるスキルがないと、経営者が経営方針や事業計画を熱心に説明したところで、スタッフはどう行動したら良いか分からないからだ。
製造業であれば、PDCAサイクルやQCサークル(小集団による改善活動)を活用した教育研修は数多くの職場で実施されている。改善活動で使用されるQC七つ道具という分析手法は、まさに問題発見・解決のためのスキルである。
研修プログラムはインターネットで検索すれば、容易に見つかる。ロジカルシンキングの初歩的なテキストを購入して、社内講師による独自のプログラムを作っても良い。接客以外の教育研修制度が充実しているサービス業の会社は少数であるため、皆さまの旅館・ホテルで積極的に取り組めば、求職者にとって魅力的な企業であることをアピールできるだろう。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)