【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン390】成熟化時代の開発リニューアル戦略3 青木康弘


 前回に引き続き、円滑に開発リニューアル融資を得るコツについて紹介しよう。国内の旅館・ホテルマーケットも、成熟化の兆候が見え始めてきており、金融機関も新たな貸し出しに対して慎重になりつつある。しっかりと説明できるよう裏付けを持って融資申し込みしたい。

 6、あえて運営委託形式にする

 旅館・ホテルを自社で開発・運営するよりも、運営は他社に任せて不動産賃貸業に切り替える方が、融資審査が通りやすいケースもある。

 前者が旅館・ホテル業の事業性について詳細に審査されるのに対して、後者は地代家賃を安定的に払ってくれる借主さえいれば事業計画を信用してもらいやすいからだ。実際に、旅館・ホテル業に新規参入する法人に対して、運営を他社がやることを条件に、金融機関が開発資金を全額融資するケースは散見される。

 異業態に進出する際にも有効な手段である。老舗の温泉旅館が事業の多角化を図るために、レジデンス型ホテルに進出すると仮定しよう。同じ宿泊業といっても業態は大きく異なり、金融機関からスムーズに融資を受けられるとは限らない。こういう時に、あえて運営受託や運営サポートをしてくれる法人の協力を得るのである。

 運営委託形式を採用することで融資を得たとしても、永続的に他社に委託する必要はない。委託先との契約条件により異なるが、途中から直営に切り替えても良いだろう。

 後継者難に悩む旅館・ホテルオーナーにとって、運営委託によって存続を図るというのは一考の価値がある。子息が異業種に就職したり、結婚したりして現業に関われなくても、不動産オーナーという立場であれば常駐しなくても済むため兼業が可能だ。

 金融機関からは不動産賃貸業と見てもらえるため、開発リニューアル投資に対しても融資を出してもらいやすい。

 直営にこだわりたいという法人は多いと思うが、名を取るよりも実を取ることも時には必要だろう。開発リニューアル融資を円滑に得る手段の一つとして検討することをお勧めしたい。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

 
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