前回に引き続き、すぐに取り組める人材採用・定着化のための対策テクニックを紹介しよう。人材不足のために、せっかくの増収のチャンスを逃してしまったり、口コミ点数が下がってしまったり、再生プランが達成できなくなったりという問題が日本各地で起きている。検討に時間を費やすのではなく、今できることをすぐに取り組もう。
■最新の給与・賃金相場を常に把握しておく
求人広告の内容で悩みがちなのが給与・賃金の提示額である。給与・賃金相場は上昇傾向にあるため、過去と同じ額では人は集まりにくい。一方で、金額が高すぎると既存スタッフとのバランスに苦慮したり、人件費が業績を圧迫したりする。提示額を決めるには合理的な根拠が必要だ。次に挙げるデータを参考にして基準を明確にしておこう。
●求人・求職賃金状況
各地域のハローワークが、職種別の募集賃金相場、求人倍率をインターネットで毎月公表している。求人倍率の高い地域では、平均的な賃金では人材を集めるのは難しいことを留意したい。
●indeed
ハローワークのほか、提携している求人媒体の情報をインターネットで見ることができる。地域と職種で一括検索できるので、旅館・ホテル業の求人相場を調べやすい。
●賃金構造基本統計調査
厚生労働省がインターネットで公表している賃金統計である。職種別だけでなく、性別、企業規模別、雇用形態別、都道府県別、役職別、年齢別、経験年数別の切り口で平均賃金を知ることができる。例えば、30歳で経験年数14年の男性調理士の所定内給与額の平均はいくらか知ることができる。
採用時の基準は、自社の募集賃金を平均プラスマイナ○○円と決めておけば、社内の合意形成もしやすいだろう。国内企業の求人意欲が旺盛なことに加えて、旅館・ホテルの新築、増改築ラッシュにより、来年度もさらに給与・賃金相場が上昇していくことが予想される。
全国的に人件費のさらなる増大は避けられない状況にある。人材難が深刻な地域は省力化のための投資も前向きに検討したい。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)