【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン369】すぐできる人材採用 定着化対策テクニック その5 青木康弘


 前回に引き続き、すぐに取り組める人材採用・定着化のための対策テクニックを紹介しよう。人材不足のために、せっかくの増収のチャンスを逃してしまったり、口コミ点数が下がってしまったり、再生プランが達成できなくなったりという問題が日本各地で起きている。検討に時間を費やすのではなく、今できることをすぐに取り組もう。

 ■有給休暇を取得しやすくする

 人手不足のために公休の買い上げ対応している旅館・ホテルにとっては、有給を取得させるどころではないのが実情だ。毎日のシフトのやり繰りだけで精一杯である。一方で、待遇改善を行って人材採用・定着化を進めていかないと、人手不足で営業継続が困難となる。

 スタッフに対する待遇改善の中で、経営陣がイメージしている以上に従業員満足度の向上につながるのが有給休暇の取得促進である。特に拘束時間の長い旅館・ホテル業のスタッフには歓迎されるだろう。もし、皆さまの館で離職率の高さを課題としているならば、前回コラムでご紹介した従業員向けアンケートを取ると良い。休暇を求める声が多いはずだ。

 有給取得を促進して人件費が高騰しないかと心配される場合には、(1)スタッフの月給・時給を採用相場(世間相場)まで上昇させる(2)スタッフを増員して労働時間を減らし休暇をとらせる(3)休館日を設けてスタッフに一斉休暇をとらせる―など複数の前提に基づき損益の見通しを試算すると良い。閑散期などを活用すれば、休暇を取らせるという選択肢が最も費用対効果が高いことが理解いただけるはずだ。

 有給休暇を取りやすくする手段として他業界で取られている施策は、次の通りである。

 ・管理職が率先して有給休暇を取得して、職場全体として取りやすい雰囲気を作る。

 ・公休とは別に有給休暇の取得目標を部署ごとに掲げ、達成度を公表する。

 ・期初または年初に有給カレンダーを作成し、スタッフが年間を通じて有給休暇の取得希望日をカレンダーに記入することで、お互いの時期調整をしやすくする。

 ・休日を利用して他館を視察したスタッフに対して補助金を出す。

 休暇を取らせることでスタッフの仕事の聖域化、囲い込みもなくなり、無駄な仕事の発見、見直しにもつながるだろう。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)
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