前回に引き続き、有望とされる多角化分野を取り上げて収益アップを図る方法について紹介しよう。旅館・ホテルの稼働率は復調傾向にあるものの、中期的に見ればインバウンドや高付加価値旅行を除き、宿泊旅行市場は縮小すると見込まれている。国内観光客をメインターゲットとした宿泊施設や観光施設は、既存事業にとどまらないさまざまな収入源を確保しておくことが望ましい。
少子高齢化が進む中で、地方にある旅館・ホテルの売り上げを維持していくためには、滞在時間のアップが重点施策の一つとなる。特に、人里離れた旅館やリゾートホテルでは、滞在時間のアップは宿泊日数の増加に直結する。少ないお客さまを取り合うよりも、宿泊日数を伸ばす施策の方が価格競争に巻き込まれにくい。
周辺に観光スポットが形成されていないエリアにある宿泊施設は、お客さまが旅の前後に時間を消費できる新規事業に取り組むと良い。ターゲットとする客層により取り組む新規事業は異なるが、動物とのふれあいパークや観光農園、陶芸・雑貨づくり、SUP、釣りなどが比較的少額の投資で始めることができるだろう。
旅の利便性を高めることも宿泊日数の増加につながる。例えば、レンタカーやコインランドリー、コワーキングオフィス事業を検討したい。
観光スポットが散在するエリアでは、宿泊施設からレンタカーが借りられると大変便利である。周辺道路が狭いエリアであればグリスロ(公道走行可能な電気カート)の導入を検討しよう。沖縄では宿泊事業者がレンタカー事業に取り組むケースが多いので参考にすると良い。
コインランドリーは連泊する旅行者にとって必須のものだ。連泊客の多いリゾートホテルやビジネスホテルには大抵ランドリー室があるが、旅館は設置されていない施設が多い。地元住民からの売り上げも期待できるだろう。
宿泊施設のロビーに電源を完備したワーケーション向けのテーブルを設置するケースが増えているが、連泊客を獲得するならば、遮音性の高い個室ブースや大型モニターの有料貸し出しを検討したい。
(アルファコンサルティング代表取締役)