【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 652】多角化による収益アップ法〈5〉 青木康弘


 前回に引き続き、有望とされる多角化分野を取り上げて収益アップを図る方法について紹介しよう。旅館・ホテルの稼働率は復調傾向にあるものの、中期的に見ればインバウンドや高付加価値旅行を除き、宿泊旅行市場は縮小すると見込まれている。国内観光客をメインターゲットとした宿泊施設や観光施設は、既存事業にとどまらないさまざまな収入源を確保しておくことが望ましい。

 この数年間で観光業界から人材が流出してしまった結果、宿泊者数の回復による業績アップが期待される今の局面にあっても、販売室数を抑制せざるを得ない状況に陥っている。このような人手不足は、当面の間解決することはないだろう。むしろ、急速な人口減少により、深刻化することが予想される。

 宿泊単価が高く、宿泊客への手厚いおもてなしを売りにする施設は、優れた人材の確保や客室等のリニューアル、設備更新を行い、さらなる単価アップを続けられるかがポイントとなる。もし、人手不足によりサービス低下が発生すると、宿泊単価が下落する恐れがある。そうすると、施設のリニューアルや設備更新に必要な利益が確保できず、さらなる客離れ、宿泊単価の下落につながってしまう。

 サービス低下した古い施設にとって、大きな脅威となるのが無人型ホテルである。新しい内装、設備と広い客室を売りにして異業種から新規参入が相次いでいる。以前は、別荘や民泊に似た業態として展開されることが多かったが、最近では旅館・ホテルと同じチャネルで販売され、直接競合するようになった。

 このような新業態は、食事提供をしないケースが多いが、お客さまの口コミ評価はすこぶる良い。近隣に外食の選択肢が多いため、施設で食事を提供しなくても不満を持たれることはない。会席料理になじみのない消費者が増え、旅館で料理を楽しむという常識が崩れているのも理由にあるだろう。

 皆さまの施設が長期的にみて、単価アップと人材確保、施設リニューアルの好循環が続けられるか検討してみてほしい。もし、難しいことが予想されるのであれば、運営の在り方を根本的に見直す必要があるだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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