【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 651】多角化による収益アップ法〈4〉 青木康弘


 前回に引き続き、有望とされる多角化分野を取り上げて収益アップを図る方法について紹介しよう。旅館・ホテルの稼働率は復調傾向にあるものの、中期的に見ればインバウンドや高付加価値旅行を除き、宿泊旅行市場は縮小すると見込まれている。国内観光客をメインターゲットとした宿泊施設や観光施設は、既存事業にとどまらないさまざまな収入源を確保しておくことが望ましい。

 多角化を進めようとすると、これまで取引したことのない、さまざまな業者と接触することになる。中には、脅迫に近い態度で強引に契約を交わそうとしたり、甘言によってだまそうとしたりする業者もいる。場の雰囲気に流されず、毅然とした態度で自社にとって取引すべきか冷静に交渉したい。

 問題となり得るのが、黒字見込みのないフランチャイズ契約である。新規事業をスムーズに立ち上げるために、フランチャイズ加盟を検討する企業は多い。多くのフランチャイズ本部はしっかりとした指導体制とノウハウで加盟店をサポートしてくれるが、中には悪質なチェーンもある。

 例えば、出店シミュレーションにおいて黒字化が見込めるか否か明らかにせず加盟を勧めてくるケースである。店舗ビジネスは立地により採算が大きく異なる。黒字化見込みが薄いことが分かっていながら、高額の加盟金の支払いを迫ってくる業者には注意したい。

 最近、旅館業で増えている、施設の運営委託も悪徳業者にだまされないよう注意したい。オーナーが運営委託スキームや法律、金融に疎いことにつけ込んで、不利益な契約を迫る業者がいる。中には、オーナーの実印や印鑑カード、通帳を預かり、施設を乗っ取ろうとする業者もいる。残念ながら、地元の銀行も運営委託に関する実務に詳しくなく、悪徳業者の言い分を信じてしまう。

 多角化を進めるにあたり、業者と契約する際には、その場の雰囲気で調印しないよう注意したい。必ず、契約書の全文を読み込んだ上で、顧問弁護士にチェックを依頼し、不利な条文があれば業者に是正を要請することをお勧めする。もし、業者が拒否する場合には、取引を中止するなど冷静な対応が必要だ。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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