前回に引き続き、平凡な施設をいかに魅力的な施設に変えていくかについて説明したい。コンセプトを明確化して差別化を図るというのが良いとされているが、個性のはっきりした施設は少数だ。多くの経営者は、自社の施設は平凡で特色なく集客しにくいと悩んでいる。
以前であれば、宿泊施設の魅力は食にあるという考え方が根強かったが、これから食をセールスポイントにしていくのは難しい時代になってきている。料理人の求人は難しく、給与水準も高騰している。度重なる材料の値上げもとどまることを知らない。
このような状況下で料理に力を入れすぎると短期的には売り上げアップにつながったとしても、忙しいばかりで現金が残らない。むしろ赤字が拡大する事態に陥ってしまう可能性が高い。オーナーシェフの施設であったり、大規模な施設で調理部門が充実していたりする場合は問題ない。平凡な施設が安易に料理を売りにしようとすると困難が伴うことを理解しておきたい。
皆さまの施設が老朽化して客室を販売することに自信がない状況ならば、料理に力を入れるよりも、まずは周辺マーケットより少し安く客室を販売して稼働を稼ぎ、現金を少しずつ蓄積していくことをお勧めする。
次に、客室の清潔感を向上するための美装清掃やターゲット顧客に合わせた軽微な客室改装や備品の導入を行うと良い。設備投資に合わせて100円単位で少しずつ値上げを行っていくのである。ここでのポイントは、ターゲット層を明確化することである。限られた予算を自社が狙っている顧客だけのために使うのである。対象を絞ることで予算を圧縮することができ、またアイテムの選定もブレなくなる。
例えば、客室の水回りや建具の美装清掃、ターゲット顧客の好みに合ったクロスの張り替え、ベッドや椅子テーブルの導入を行うのである。材料はごく安価なもので良い。安いクロスや合板であっても清潔感は格段に高まる。
コロナ融資により有利子負債が膨らんで、改装のための追加融資が受けられない施設が多いだろう。無理をせず、日々の収益の中から一部を客室の商品力アップに振り向け、100円単位で少しずつ値上げをすることで好循環に転ずるチャンスを得たい。
(アルファコンサルティング代表取締役)