【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 600】2022年に取り組むべきこと6 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、2022年に取り組むべきことを紹介したい。21年は新型コロナ対策に翻弄(ほんろう)された1年だった。早期の収束が期待されたが一転、回復の兆しも見えないまま1年が過ぎ去ってしまった。今年こそは逆境をチャンスに変える1年としたい。

 7、人材採用戦略を見直す

 コロナ禍よる業績悪化の影響で人員削減を加速させる大手企業のニュースが目立っているが、旅館・ホテル業界では採用難が一層深刻化している。

 年末や期末を機に退職者が相次ぐ一方で、新規の求人広告は全く応募がないという状況だ。新型コロナが落ち着いたらスタッフを増やせば良いという甘い考え方は捨て去った方が良い。これまで以上に採用が難しくなるという構えで人材確保に臨みたい。

 他業種ではテレワークにより勤務時間や場所の制約が急速に緩和された。スタッフの負担軽減や生産性向上にもつながっており、新型コロナが収束してもこの働き方は変わらないだろう。

 この点、旅館・ホテル業は勤務時間と場所が制約されやすいため、勤務先として魅力が低下している。このギャップを埋め合わせるための対策として、勤務時間や業務内容を限定した限定正社員制度や週1日程度の在宅ワーク日の導入、閑散期を活用したシーズン休暇の導入などを検討したい。

 旅館・ホテルの多くは、正社員またはパート・アルバイトの枠のみで求人しているが、働き手のニーズに応えられず採用に苦戦している。高い人件費を払って派遣会社を利用するのは皮肉な話である。

 働き手の立場からすると、派遣会社は勤務日、勤務時間に柔軟性があり、賃金水準が直接雇用のパート・アルバイトと比べて高い。本人が望めば社会保険にも加入することができるなどメリットが多い。自社の人事制度の問題を放置して、派遣会社に依存するばかりでは問題の根本解決にならない。派遣会社の求人広告や待遇を参考に自社の見直しを図りたい。

 職場のイメージアップにも力を入れたい。自社サイトはお客さまだけではなく求職者もチェックする。SDGsやまちづくりへの貢献に関する取り組み情報を充実させて、働くスタッフのイメージがつきやすいサイト作りを心がけると良いだろう。

 スタッフに負荷のかかる部屋出しは、収益性と将来性を考慮して継続するか否かを決めたい。旅行会社や特定のお客さまの要望で部屋出しを行う場合には、適正な対価が得られるかどうかで継続の可否を判断したい。

 将来的に人材採用難が想定される場合には、リニューアル投資に予算を振り向けて、施設の魅力アップによる集客を図りながら、人員の合理化を進めたい。

(アルファコンサルティング代表取締役)

 
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