前回に引き続き、休館中でも取り組める施策を紹介したい。新型コロナの再燃により、ゴールデンウイーク明けから休館を余儀なくされている施設は少なくない。いつ終息するのかと気をもむ日々を過ごすのはつらいものである。今のうちからアフターコロナに向けた準備を進めておきたい。
10、投資は感覚だけに頼らず市場調査を徹底する
政府の支援策もあり、休館中に施設改装や新規事業に取り組む旅館・ホテルが増えている。業績が厳しい中、思い切った投資を行うだけに、期待する売り上げや集客が得られるか気をもむ経営者は多いだろう。工務店や自分の感覚任せにせず、顧客の期待に応えるものか徹底した調査を行いたい。
施設改装のデザインの方向性で迷ったときには、ウェブアンケート調査を行うと良い。中でもマクロミル社が提供する「ミルトーク」(https://milltalk.jp/)は安価に市場調査ができるのでお勧めだ。
例えば、露天風呂付き客室を作る場合、異なるデザインのイメージパースの中から最も好みのものを写真で選んでもらうというアンケート調査も可能である。年齢や性別、居住地などの属性ごとに回答を集計することもでき、ターゲット層にあったデザインであるか検証することができる。
新規事業に取り組む際に、魅力的な市場が迷ったときには、政府が提供している「地図で見る統計(jSTAT MAP)」(https://www.e-stat.go.jp/gis)を活用することをお勧めする。民間が提供するGIS調査ツールは数百万円と高価だが、この統計ツールは無料だ。
例えば、旅館・ホテルの敷地を利用した新規事業として地元民向けの飲食店や小売店、テレワーク施設等を始める場合に、近隣の人口や世帯数、事業所数などを調べることができる。ある地点を中心に半径500メートルの範囲の人口等を調べることも可能だ。こちらのデータと家計調査を組み合わせれば、どの程度の市場規模が期待できるか計算することができる。
特に気をつけたいことは、人口や消費額が年々減少している場合だ。少ない需要を競合他社と取り合うことになるので低価格競争に陥るリスクがある。新規事業に取り組む場合には、対象となる市場が拡大しているか必ずチェックしたい。
(アルファコンサルティング代表取締役)