【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 570】休館中に取り組める未来の1歩 5 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、休館中でも取り組める施策を紹介したい。新型コロナの再燃により、ゴールデンウイーク明けから休館を余儀なくされている施設は少なくない。いつ終息するのかと気をもむ日々を過ごすのは辛いものである。今のうちからアフターコロナに向けた準備を進めておきたい。

 8、地域内外の企業・団体との関係づくりを強化する

 地域の同業者は信頼できる仲間であるが、話し合っても斬新なアイデアが出にくいという問題がある。これまでの運営の常識にとらわれがちで、会合の場でも決まりきった話題しか出てこないことが多い。

 加えて、新型コロナの影響により投資する資金が捻出できない施設が参加していると、予算が必要な企画やアイデアが話題として出しにくくなる。お金のかかる提案はやめようと遠慮が働き、前向きな取り組みができないという旅館・ホテル組合は少なくない。

 このような場合は、まずは地域や異業種の連携が必要な補助金申請を目標にして取り組みすると良い。最近の例で言えば、観光庁の「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」「地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進に向けた実証事業」などが挙げられる。

 補助金が出るということであれば、参加企業・団体を集めやすく、申請資料作成を通じて地域としてどのような取り組みをすべきか話し合いをするきっかけとなる。

 著名温泉地であれば、補助金がらみの話があったときに幹事役となる企業が決まっているが、そうでない場合は皆さまがリーダー役になることをお勧めする。普段、地域で目立つ館でなくても構わない。受け身でチャンスをつかむことはできない。面倒がらずに地域活性化をけん引しようという意気込みで他社を巻き込んでほしい。

 参加企業・団体を集めるための後ろ盾を必要とする場合には、自治体や観光局、観光協会などの中から相談しやすい担当者のいるところへ打診すると良い。他社へ声がけする橋渡しをしてくれるだろう。

 交通事業者や物産店、観光施設、農林漁業者の中にも現状を改革したいと志をもった人はいる。時間のある今のうちに協力体制を築きたい。地域内外で観光業に関心をもってくれそうな企業へ声かけするのも良いだろう。特にDXやSDGsに係る取り組みを旅館・ホテル業だけで実現するのは困難である。あえて異業種企業に声をかけて、事業参画してもらうと良い。

 待ちの姿勢にならず、自ら行動を起こしたい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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