前回に引き続き、新型コロナの影響が続く中で銀行向けの事業計画を策定する方法を紹介しよう。お盆休みの週は多忙を極めた旅館・ホテルが多かったが、9月以降の業績見通しが立たないという声も聞く。継続的な資金繰り支援を受けられるよう万全な対応したい。
5、事業の多角化を計画に盛り込む
政府の観光振興施策に端を発したインバウンドブームによって隆盛を誇った旅館・ホテル業界も新型コロナ流行によって一転、大変厳しい状況に陥っている。「Go Toキャンペーン」の効果もあり業績は回復傾向にあるが、改めて観光業に特化することのリスクが浮き彫りになったと言える。収益源を分散化し、安定した経営を行うために事業の多角化を行うことをお勧めする。
観光業と親和性があり、安定化させやすいのは不動産ビジネスとの組み合わせである。マンション賃貸業やテナント賃貸業、不動産仲介・管理業、建設業を兼業している会社は、コロナ下であっても業績が底堅い状況にあった。
宿泊稼働率が低迷する時期でも、マンスリーマンションの稼働率が堅調である地域があった。不動産収入によって旅館・ホテルの売り上げの落ち込みをカバーすることができたのである。施設の開発やリニューアルを今後行っていくのであれば、客室だけでなく、商業テナントやマンション、オフィス等を組み合わせた複合施設としていくことをお勧めする。
次に安定化させやすいのが、宿泊業のノウハウを応用したビジネスである。ECサイトの運用やアウトドア、アクティビティ、6次産業、料理コンサルティング、運営受託(マネジメント契約)、スタッフ教育など、旅館・ホテルの運営経験を生かして横展開できるビジネスは多い。ノウハウをもった優秀な人材を自施設の運営にとどめておくのではなく、宿泊売り上げ以外の収入源の獲得に振り向けることをお勧めする。
旅館・ホテル業は今回のように周期的に流行する伝染病だけでなく、気候変動による災害や地震、政治的な紛争、景気循環から大きな影響を受ける。将来、何らかの災害等により宿泊者が減少しても会社として存続できるよう、今のうちから多角化の準備を始めたい。
(アルファコンサルティング代表取締役)