前回に引き続き、アフターコロナ時代に取り組むべき施策について紹介しよう。新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした強烈な自粛要請や衛生指導は、消費者の生活様式や価値観、嗜好を大きく変えてしまった。従前のコンセプトや運営方針、商品サービス、ハード設備では宿泊者の満足が得られない可能性がある。早めに対策を講じて良いスタートを切りたい。
12、金融機関の態度硬化に先手を打って対応する
新型コロナの影響により、資金繰りが悪化している施設が銀行からの融資を断られるケースが増えているようだ。政府の融資制度の拡充と銀行への指導が積極的に行われた3月、4月ごろは、多くの旅館・ホテルが資金調達に成功した。しかしながら、2度目の融資が出にくくなっている。このままでは、Go Toキャンペーンの恩恵を受ける時期まで資金がもたない施設が続出するだろう。
この背景には、金融機関の態度硬化がある。当初は条件の緩やかな制度枠を使って融資を行っていたが、現在では事業継続性や担保状況、資金計画などを厳しくチェックされるケースが多い。第2会社方式などの債権放棄スキーム、リスケジュールによって再建途上にある施設が、財務基盤の脆弱(ぜいじゃく)さを理由に融資を断られて法的整理に移行するケースは少なくない。新型コロナ対策の融資制度があるから貸してくれるだろうと安易な判断をせず、円滑に融資が受けられるよう対策を準備したい。
7月は金融機関の人事異動の時期でもある。過去経緯を知らない担当者との融資折衝は時間がかかることが多い。銀行員の中には、新型コロナの影響が長期間続き、売り上げが戻らないのではないかと考える極端な悲観論者もいる。理論武装をしっかりと行い、融資を謝絶されないよう注意したい。
融資を受けやすくするためには、今後の収支見通し、資金繰り、返済見通しを具体的な数値でまとめた資料を用意すると良い。昨年の月次試算表を基準に掛け目を入れて、コロナの影響が段階的に解消されていくことを数字で示すと良い。
回復見通しについては、外部の調査資料や大手企業のIR資料、専門家の意見などを整理して説明すると説得力が高まる。曖昧な表現ではなく、現在から○カ月後まで影響が続くと具体的に示した方が納得してもらいやすいだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)