
前回に引き続き、アフターコロナ時代に取り組むべき施策について紹介しよう。新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした強烈な自粛要請や衛生指導は、消費者の生活様式や価値観、嗜好を大きく変えてしまった。従前のコンセプトや運営方針、商品サービス、ハード設備では宿泊者の満足が得られない可能性がある。早めに対策を講じて良いスタートを切りたい。
8、施設の規模・客層により売り上げ回復の道筋が異なる
6月に入り営業再開する施設が増えてきた。少し明るい兆しが見えてきたが、流行前の水準まで客数が戻るには、相当の時間がかかると見込まれている。客数の回復ペースは施設の規模・客層により差が出るだろう。客層ごとに風評への敏感度、予約から宿泊までのリードタイム、制限解除・入国再開のタイミングが異なるからだ。自施設の売り上げ回復ペースを予測した上で経費計画を立てることで早期の黒字化を実現したい。
大型施設は、個人客から法人・団体客、インバウンドまで多様な顧客の受け入れを可能とする設備・運営体制を強みとしている。一方で、固定費負担が重く、売り上げが低迷すると巨額の赤字に転落しやすい。今回は売り上げ回復に時間がかかることが想定されるため、当面の間は徹底的な固定費削減に努めることをお勧めする。本格的に客数が回復するまでは全館営業は控えて、少人数スタッフで部分的な運営ができるよう体制づくりを行うと良いだろう。
中型以下のうち、法人客や老人会、インバウンドなどを主要顧客としてきた施設は、秋口以降まで売り上げが見込めない可能性がある。早期の営業再開を目指すならば個人客へのシフトを図ることが望ましい。集客するためには十分なマーケティング予算を投じる必要がある。コンセプトの見直し、自社サイトの見直し、料理・プランの見直し、館内設備の更新(食事会場、貸し切り風呂)などを取り組みたい。もし、個人客へのシフトが難しければ雇用調整助成金をうまく活用して休館を続けた方が赤字は少なくて済むだろう。
高単価の個人客を対象とする小規模施設は、自粛要請期間中も人気を集めていたので売り上げ回復は比較的早いだろう。ただし、少人数での運営ゆえに退職者が増えると営業継続が難しくなる。大型施設と異なり固定費削減の効果も限定的なので、雇用維持のために早期の営業正常化を目指すことをお勧めする。
(アルファコンサルティング代表取締役)