【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 442】日本型泊食分離の進め方5 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、日本旅館が泊食分離へスムーズに移行するための具体的ステップを紹介しよう。拙速に導入すると業績悪化につながるリスクがある。思わぬ落とし穴に注意しながら進めたい。

 皆さまの旅館が泊食分離を進めようとしても、料飲部門に対応能力がなかったり、周辺の他館や飲食店の協力が得られなかったりなどによって現時点では実現できないことがある。このような場合には、将来実現するために今のうちから次のような対策を始めると良いだろう。

 (1)出前(ケータリング)可とする

 周辺で出前(ケータリング)対応してくれる飲食店が複数あるならば、旅館の夕食の代わりに出前をとってもらうことを検討してみよう。特に、連泊客は毎日旅館の食事だと飽きやすいので歓迎されるだろう。飲食店からバックマージンをもらえるならば、素泊まりプランで販売するより利益率は高くなる。追加投資もかからないので導入は容易である。

 (2)飲食店をテナント誘致する

 館内にスペースがあれば飲食店をテナントとして誘致することを検討してみよう。直営の食事会場と料理ジャンルが被らないようにすれば、相乗効果が期待できる。追加投資はかかるが、立地が良ければ保証金や家賃収入が期待できる。

 (3)施設外で飲食店を運営する

 フリー客や日帰り宴会の需要が見込めるならば、旅館とは別に、飲食店を開業することを検討してみよう。予約なしでも受け入れ可能な業態にすれば、泊食分離を進めやすくなる。高額な追加投資がかかるので、ランチやフリーのディナー客、日帰り宴会だけで採算ラインに届くかどうか、よく検証してから取り組もう。

 (4)他館と飲食店を共同運営する

 近隣の旅館・ホテルと共同出資して飲食店を開業することを検討してみよう。周辺の飲食店を居抜きで買収しても良い。自館の料飲収入が減少することが懸念されるならば、料理ジャンルが被らないようにしたり、個人客向けのバーや軽食店として利用していただいたりすると良いだろう。夜の観光資源の充実にもつながる。追加投資はかかるが、共同出資であれば負担は軽減される。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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