旅館・ホテルの経営者が頭を悩ませる問題の一つに、スタッフの不正や不祥事がある。金銭横領は数百万円単位の損失となることも珍しくなく、会社の資金繰りに影響を及ぼすこともある。身内の恥をさらすことになるので刑事告発することもできず、人手不足から出勤停止することもできずに悩むケースもある。
不正・不祥事は、経営者が評価し信頼を寄せている幹部スタッフが引き起こすケースが多く、影響も深刻だ。すっかり人間不信になってしまう経営者もいる。今回コラムでは、このような事態に陥らないために、不正・不祥事を仕組みでどのように抑止するか説明しよう。
1、1人に仕事を任せすぎない
優秀だから、人手不足だからといって1人のスタッフに権限ある業務を任せすぎてはいけない。効率を犠牲にしてでも業務を分割して、複数のスタッフが関わらないと業務が進まないような仕組みに変更することが望ましい。特に分割した方が良いものは、フロント・予約とキャッシャー、調理・売店と購買、記帳と支払いである。
フロント・予約とキャッシャーの権限があれば、予約データを改ざんして横領することが可能となる。調理・売店と購買の権限があれば、仕入れ業者と結託したり在庫を改ざんしたりすることで横領することが可能となる。
記帳と支払いの権限があれば、架空の取引先を作って送金することが可能となる。このような不正を抑止するには、業務を2人以上で分担し、相互にチェックが働くような仕組みを作ることが望ましい。
2、現金に接触するスタッフを限定する
現金の取り扱いは少数のスタッフに限定し、日々現金と伝票合計を照合させる仕組みを作ることが大切だ。典型的な不正の手口は注文の取り消し、未計上である。手書きの伝票であれば破棄、POSやホテルシステムであれば取り消し処理が行われる。
通番のチェックや中間点検を毎日行うことをおすすめする。日計表に取り消し金額や件数が表示できるようシステム設定を変更するのも効果的だ。
(アルファコンサルティング代表取締役)