中国の一大旅行シーズン「春節」が一月ほど前に終わった。元来、日本のお正月同様、帰省シーズンとしての意味合いが強かった春節も、中国沿岸部だけでなく、内陸の経済も底上げされたことで、海外旅行シーズンとして活用されるケースが多くなった。海外旅行者数は昨年比28%増の700万人に及ぶ。
日本の観光目線から見ると、この中国の海外旅行需要の目線のほとんどが日本に向いているように思うが、実は中国の海外旅行先人気ランキングでは、常に第1位の座をタイに奪われている実情がある。今回の春節も御多分に漏れず、日本はタイの後塵を拝した。
中国の旅行体験共有サイト、馬蜂窩(マーファンウォー)をのぞいてみると、中国人が日本よりタイを旅行先に選ぶ理由として以下の5点が浮かんでくる。
一つ目が街中に中国語が多いこと。街中のいたるところに中国語表記が準備されていることから、個人旅行でも不安感がないという。
二つ目が中国料理とタイ料理の親和性だ。基本的な調理法や味付けに似た部分があり、食に関して不満が出にくいということだ。
三つ目がコストパフォーマンスだ。例えば、中国OTA最大手であるCtrip(シートリップ)では5泊7日プーケットへの団体旅行プランが約5万円で販売されている。一方、東京から大阪を巡る日本旅行は、5泊6日で約8万円だ。
四つ目がタイの旅行がシンプルであることだ。滞在中は一つの島にとどまり、泳ぎと海鮮を楽しめば十分に満足できる目的地として知られているため、初心者でも綿密な旅行の計画を立てなくて済む点が安心感を生む。
最後がビザ取得のハードルが日本よりもタイの方が低いことだ。15日以内の観光であれば、「アライバルビザ」をタイに着いてから取得できるのだ。
このように、気軽に安く、快適に海外旅行を楽しめるタイは「収入はあるが、海外旅行初心者」という中国人旅行者にとって、メンツを保ちながら周囲にも自慢できる「ちょうどよい選択肢」なのだろう。今後のインバウンドにおいて、タイはベンチマークすべき指標となるだろう。