
2次避難先として活躍する旅館・ホテル(写真と本文は関係ありません)
最大震度7を観測した能登半島地震から1カ月がたった。当初の混乱は収まりつつあるが、時間がたつにつれて被害の大きさが明らかになっている。被災した観光地や旅館・ホテルの現状も刻々と伝えられている。「がんばれ」という言葉をかけるのもはばかられる。復旧・復興には相当の時間がかかりそうで、心が折れないことを願うばかりだ。
被災地では体育館や公民館などの避難所から、生活環境の整った旅館・ホテルを活用する「2次避難」が始まっている。震災後の体調悪化に起因する「災害関連死」を防ぐ意味でも、2次避難所の果たす役割は大きい。
2次避難の対象となるのは、優先順に(1)孤立状態にある地区にいる人(2)妊婦や高齢者、障害のある人などの要配慮者とその同伴者(3)そして希望する人の全員―。
生活環境の変化が心身にもたらす負担は大きく、生まれ育った古里を離れる不安もあるだろうが、できるだけ早く移ってほしいものだ。
大型バスで2次避難先に移動してきた被災者のホッとした表情をみると、観光業の力も捨てたものではないと思う。自治体などからの要請を受け、名乗りを上げてくれた施設の方々の協力姿勢に感謝したい。
避難先の旅館・ホテルの中には、これまでパンや弁当などを3食分提供していたが、少しでも温かい食事をとってもらおうと、バイキング形式の朝食を始めたところもある。
一方で、避難所や自宅にとどまるという人もおり、「2次避難が思うように進まない」と頭を抱える自治体関係者もいる。道路が寸断し移動が難しいことや、前述のように古里を離れることへの不安などが背景にあるとされる。
2次避難の受け入れを表明する自治体も増えている。
被災地から遠く離れた沖縄県は1月12日、被災者の受け入れ方針を決めた。「厳冬の被災地から広域的・短期的な避難先として県へ避難される被災者に対して次の通り対応する」として、(1)ホテル、旅館業組合等と連携し、宿泊施設の確保に努める(2)宿泊費の一部助成(3)交通費のうち航空運賃については本土―那覇空港間の往復費用を全額支援する、ことなどを表明した。
観光庁も2次避難を支援する。髙橋一郎長官は1月中旬の会見で、「まずは2次避難の円滑な実施への支援に最大限力を尽くす」と強調する。
2次避難をしても、いつ戻れるかの不安を被災者は抱えている。首長らリーダーが「必ず戻れる」という強いメッセージを発することもまた重要だ。長期化する震災被害だが、早期の復旧・復興に観光業界は力を合わせて臨もう。
2次避難先として活躍する旅館・ホテル(写真と本文は関係ありません)