【観国之光 317】東北絆まつり 東北観光に追い風を 本社論説委員 内井高弘


東北6県の県庁所在地の祭りが2年ぶりに集うことになった(東北絆まつり山形のホームページから)

 3月で発生から10年を迎える東日本大震災。激しい地震と巨大な津波、原子力発電所の事故が重なった未曽有の複合災害だった。死者・行方不明者は2万2千人を超え、約3万7千人がいまだ避難生活を続けているという。

 10年がたち、震災への関心は薄れてきているように思う。この間、熊本地震(16年)や北海道地震(18年)が起きた。気候変動に伴い、台風や豪雨災害も激甚化し、しかも昨年からは新型コロナウイルスが猛威を振るっている。

 震災の記憶の風化も指摘されるが「やむを得ない」と諦観せず、10年を機に改めて犠牲者に哀悼の意を表し、被災地支援の決意を新たにしたい。

 新型コロナの影響で多くの祭りやイベントが中止となる中、「東北絆まつり」が5月22、23日に山形市で開かれることが決まった。東北絆まつり実行委員会の会長を務める佐藤孝弘山形市長が3日、明らかにした。テーマは「絆の火を灯す」という。右下の記事と重複するが、明るい話題なので取り上げる。

 東北絆まつりは東日本大震災の鎮魂と復興を願い、11年から毎年開催されてきた「東北六魂祭」を引き継ぐもので、開催されれば4回目となる。これまで仙台市(17年)、盛岡市(18年)、福島市(19年)で開かれた。昨年5月に山形市で開催される予定だったが、新型コロナの影響で延期となっていた。

 東北絆まつりには「青森ねぶた祭」「盛岡さんさ踊り」「秋田竿灯まつり」「山形花笠まつり」「福島わらじまつり」「仙台七夕まつり」が参加する。

 新型コロナの感染防止のため、踊り手が市内中心部約1キロを練り歩くパレードは23日のみとした。例年よりも踊り手を減らすことを検討している。また、パレード観覧席は全席有料で、5千席に限定する予定。有料席以外で観覧することはできないようだ。

 感染状況によっては、まつり全体を市総合スポーツセンターでの開催を検討するという。

 制約がある中での祭りとなりそうだが、関係者の思いは熱いようで、福島県の地元紙は「2年分の元気を見せ、コロナを吹き飛ばすパフォーマンスを見せられるよう万全の体制を整えたい。震災丸10年の年でもあるので、福島の魅力を発信したい」という祭り関係者の意気込みを報じている。

 5月中旬といえば、東北地方の観光振興を後押しする「東北デスティネーションキャンペーン(DC)」が展開されている時でもある。東北絆まつりがDCを大いに盛り上げ、多くの人を元気づけてほしい。震災10年の節目、開催を期待したい。コロナの終息を願うばかりだ。

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