新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない状況下、11都府県(東京、埼玉、千葉、神奈川、栃木、愛知、岐阜、大阪、京都、兵庫、福岡)に出されていた緊急事態宣言が、栃木を除き3月7日まで延長されることになった。
これに伴い、観光支援策「Go Toトラベル」の全国的な一時停止も維持されることとなり、観光業界とって厳しい状況が当分続く。「2月7日以降の営業再開を心待ちにしていたが、いつまでこの状態を続ければいいのか…」。宣言を機に休館していた旅館経営者の悩みは尽きない。
今年度第3次補正予算が成立し、Go Toトラベルの予算が1兆円強追加された。与党は「経済を回す備えとして当然のこと」と必要性を主張するが、何かと批判も多い。観光業に目を向ける菅政権の姿勢は歓迎だが、観光業に批判の矛先が向くのを恐れる。
観光業は宿泊施設、旅行会社だけで成り立っているのではない。実に多くの事業者が関係しているのだ。一つの旅館が倒産すると、その影響はさまざまな業種に及ぶ。事業構造が理解されていないのではないかという気がしてならない。観光業の重要性を国民にどう理解してもらうか。業界の課題の一つではないだろうか。
話は変わるが、コロナ禍の影響は宿泊施設にも及び、接客や食事、入浴の在り方など見直しを迫られた。「ワーケーション」対応をアピールする施設も少なくない。ウィズ・アフターコロナをにらんでの対応が欠かせない。
最近では日本を代表するホテル「帝国ホテル」が打ち出したサービスが話題となっている。泊まるのではなく、住むという、ホテルの新しい活用方法で、「旅館業法下で行う『ホテル内サービスアパートメント』という新しい住まい方を提案する新規ビジネス」と位置づけている。
客室3フロアの一部を改修し、99室を専用のアパートに充てる。ホテルの客室数は約900室で、1割ほどがアパートになる。価格は約30平方メートルの部屋で月額36万円(税・サービス料込み)。1泊当たりに換算すると1万2千円。最低5泊から受け付ける。
高いか安いか、判断は分かれそうだが、この料金でホテルにあるプールやフィットネスジムなどを利用できるほか、1階のラウンジでは1杯1500円以上するコーヒーや紅茶を自由に飲むことができる。エグゼクティブ層を中心とした第2の仕事場としての利用を見込んでいる。
コロナ禍で業績は振るわず、稼働率も芳しくない。窮余の一策なのか、新時代のビジネスモデルの創出なのか不明だが、超一流ホテルの試みは注目される。
帝国ホテルの一部業態転換の試みは、宿泊施設の在り方に一石を投じるか