2020年は日本、いや世界中が新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)され、観光業界も散々な1年だった。令和3年目となる21年はどんな年になるのだろうか。
大きな関心事は7月23日に開幕する東京五輪だろう。中止の可能性に言及する海外メディアも出てくるなど、開催を巡る不安が国内外で高まっている。1月上旬の共同通信の世論調査では、中止や再延期を求める声が約8割を占めたという。
開幕まで半年を切ったが、訪日客を含めた観客制限の可否、選手や関係者の感染防止策など検討すべき課題は山積している。3月25日からは聖火リレーも始まる予定だ。政府の確固たる姿勢を早急に示してほしい。
政府の観光支援策「Go Toトラベル」事業が一時停止され、緊急事態宣言の対象地域となっている11都府県との往来も制限されている。期限となる2月7日に注目が集まるが、延長の話も出てきており、そうなれば事態は一層深刻になる。
頼みの綱はワクチンで、政府は2月下旬から接種を始める方針だ。国立病院機構などの医療従事者約1万人へ先行接種をはじめ、その後、約370万人の医療従事者へ広げる。3月には高齢者らへの接種を行うが、その後のスケジュールははっきりしない。副反応や変異種に効くのかどうかという問題もあるが、広く行き渡り、コロナ禍の早期終息を願うばかりだ。
厚生労働省の感染状況を分析する専門家会議のメンバーで、国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)は民放の番組でGo Toトラベルについて次のような見解を示した。
「いわゆる小規模な分散化したものであれば、比較的感染リスクは抑えられるということは分かっている。東京から箱根だったりに家族で温泉に行って、ほかの人に会わずに帰る。その中で感染が広がるわけではない」
「問題なのは、職員旅行や修学旅行に使える、ピークも連休も使える、ああいう制度設計だと感染リスクを高めることになる。経済的な支援として非常に効果があることは分かっている制度なので、ぜひ一時停止している間に制度設計をしてほしい」
Go Toトラベルの在り方の再考を求めている。専門家の立場から、制度そのものの経済的効果は認めているだけに、混乱なく再開してほしいものだ。
コロナ禍が終息すれば、再び旅行に関心が集まるだろう。家で過ごす時間が増えたことによって、外の世界を体験したいという気持ちは高まっているからだ。コロナの終息時期はまだ見えないが、今は我慢して、知恵を絞って乗り切っていただきたい。
東京五輪まで半年を切った。コロナ禍は依然深刻で、開催を巡る不安も高まっている