【観国之光 306】ゆるキャラ ブーム低下も活用策探れ 本社論説委員 内井高弘


ゆるキャラグランプリの栄冠に輝いた「たかたのゆめちゃん」

 「ゆるキャラグランプリ2020」の投票結果が10月4日、岩手県滝沢市内で発表された。ご当地部門では同県陸前高田市の「たかたのゆめちゃん」が栄冠に輝いた。

 来年は東日本大震災からちょうど10年の節目に当たる。震災で大きな被害を受けた陸前高田市のゆるキャラが地元の厚い支援を受けてグランプリの座を獲得したことは感慨深い。何より、東北勢初の栄冠だ。素直におめでとうと言いたい。

 ゆめちゃんは12年1月に誕生。背中の羽根で飛び回り、椿の花のバッグの中に入っている夢、幸せを届ける妖精。耳は震災の津波で被災した高田松原の松をイメージしている。

 今回は「THE FINAL 未来へつなぐ いわて幸せ大作戦!!」と銘打たれ、ご当地部門、企業・その他部門合わせて計691体がエントリー。インターネット投票と来場者の投票結果で順位が決まった。

 ちなみに、ご当地部門の準グランプリは大阪府泉佐野市の「ゆるナキン」、3位は埼玉県鶴ヶ島市の「つるゴン」、4位は大阪府箕面市の「滝ノ道ゆずる」だった。企業・その他部門では滋賀県・ぽんぽこちゃんねる(バーチャルユーチューバー)の「甲賀流忍者!ぽんぽこ」が1位に選ばれた。

 ゆるキャラブームに火をつけた同イベントだが、今回で幕を閉じる。「地方を盛り上げるための手段だったはずが、勝つことが目標となり、本来の目的が崩れてきた」と実行委員会が判断したといわれる。

 イベントが始まったのは2011年。東日本大震災が起こった年だ。震災で傷ついた日本を元気づけよう、ゆるキャラを通して地域活性化を図ろう―などが趣旨だったと記憶している。

 この時グランプリを獲得したのが「くまモン」(熊本県)だ。その後の活躍はご存じの通り。今でも県のイベントなどで登場しており、子どもたちから黄色い声援を送られている。

 12年の「バリィさん」(愛媛県)、13年の「さのまる」(栃木県)、14年の「ぐんまちゃん」(群馬県)など全国的な人気を得たゆるキャラも少なくない。イベントはもちろん、テレビにも登場し、自治体のアピールに大きく貢献した。

 同グランプリに目を向ける自治体も後を絶たず、ピーク時には1700体を超える参加もあったという。

 ブームはいつか去り、人々の関心も薄れる。ゆるキャラもかつての勢いはなくなっているが、地元の魅力を発信するツールとして利用価値はあるのではないか。ゆるキャラが登場すると子どもたちは一様に笑顔になる。活躍の場はイベントばかりではない。SNSなども利用して生きる術を探ってほしいものだ。
     

ゆるキャラグランプリの栄冠に輝いた「たかたのゆめちゃん」

 
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