【観国之光 302】Go To 1ヵ月 都の動向が今後の鍵 本社論説委員 内井高弘


Go Toトラベルの効果は出ているのか、意見が分かれるところだ(北海道美瑛町の「四季彩の丘」=8月下旬)

 政府の観光支援事業「Go Toトラベル」キャンペーンが始まり、8月22日で1カ月がたった。菅義偉官房長官は24日の記者会見で、この間の利用者は少なくとも200万人に上ったと明らかにした。人の移動を促す同事業は感染拡大を招きかねないとの批判もあるが、「地域を支えている観光業はまさに瀕死の状況にある」と述べ、同事業の必要性を改めて強調した。

 開始直前に東京都が同事業から除外されたこともあってか、「そもそも期待はしなかった」と冷めた声もあり、夏場の需要掘り起こしはいまひとつだったようだ。感染再拡大を恐れ、旅行をためらう人もいた。お盆期間の国内線利用者は前年比65%減、JRに至っては76%減というのがそれを裏付ける。

 ただ、成果は全くなかったとは言いきれない。気軽に行けて価格が高い温泉旅館や1人参加が条件のツアー商品が好評という。「高価格帯の部屋から予約が入る」という旅館経営者も少なくない。「補助も出るので、この際だから高級旅館に泊まってみるか」という消費者心理も理解できる。

 Go Toトラベルの鍵を握るとされているのが東京で、「東京発着の旅行が事業に加わるかどうか」に観光関係者は関心を寄せる。政府首脳も「東京は人口が多く、追加された際には旅館やホテルにとってプラスの効果が大きいのではないか」と述べる。

 西村康稔経済再生担当相は先ごろ開かれた衆院内閣委員会で、9月に政府の分科会を開き、感染状況を分析した上で判断するとの考えを示した。分科会の判断が待たれる。

 Go Toトラベルのうち、旅先での買い物に使える「地域共通クーポン」については事業者向け説明会も始まった。「9月上旬を視野に店舗の登録を始める準備を進めている」と観光庁の蒲生篤実長官は言う。実際にクーポンの配布が始まる時期は、コロナの感染状況を踏まえて政府が判断する。

 売り上げ減少に苦しんでいる観光施設や土産品店からは「観光客に足を運んでもらい、消費を刺激するきっかけになる」と期待の声も挙がる。

 Go Toトラベルは旅行・宿泊代金の割引だけを先行的に実施しているが、本来はクーポンまでが1セットとなる。できるだけ早い配布を求めたい。

 旅行喚起による景気回復と感染症対策の両立はなかなか難しく、事業そのものにも依然として厳しい目が向けられている。こまめな手洗いや消毒、3密を避けるなど、感染防止対策を一人一人が徹底し、両立を何とか達成したいものだ。

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