【観国之光 297】令和2年7月豪雨、政府は迅速な対応を 本社論説委員 内井高弘


近年、豪雨災害の頻度が高まっている。観光業にも深刻な影響を及ぼしている(気象庁のHPから)

 新型コロナウイルス感染症の影響で苦境にあえいでいる観光業に、追い打ちをかけるかのように記録的な豪雨が九州や中国地方などを襲っている。土砂崩れや河川の氾濫など広い範囲で甚大な被害が出ている。「令和2年7月豪雨」と命名された。

 ニュース番組では被害にあった旅館の様子も映し出され、疲れ切った様子や気丈な振る舞いを見るにつけ、心が痛む。同じ業界に身を置く者として、「業界全体で何かできることはないのだろうか」といつも思うが、無力感にさいなまれる。

 数十年に一度のような豪雨が毎年のように発生する時代になってきている。自らの命を守るために、避難や備えへの意識を高める必要があることは理解しつつも、どこかに自分は安全という、根拠のない楽観論が依然としてありはしないか。

 熊本日日新聞によると、7~8日未明の大雨で小国町の杖立温泉街は大きな被害を受けたが、過去に度々水害を経験した教訓から、いち早く非難し、犠牲者もけが人も出なかった。

 観光ホテル「ひぜんや」が地元住民のため浴場の無料開放を開始したとも報じており、河津豊四郎社長は「困っている住民がいたら助け合う。杖立温泉全体でお客さんを迎えられるように団結するのは大切」と話しているという。被災した旅館経営者の「心が折れそうだが、きっと立ち直って見せる」と前を向く姿に頭が下がる。

 安倍晋三首相は13日、7月豪雨で被災した地域について、2020年度予算の予備費などを活用し、4千億円超を被災地支援に充てることを表明。被災者に行政手続きの特例を設ける「特定非常災害」に指定する考えも示しており、早期の実行を期待したい。

 ライフラインなどの復旧にはまだまだ時間がかかるだろう。被災者の避難生活も長引くおそれがある。これから夏本番。コロナに対する警戒に加え、熱中症にも気をつけなければならない。政府や自治体にはきめ細かい生活支援を求めたい。

 政府による「Go Toトラベルキャンペーン」が22日から始まる。歓迎する声がある一方、東京などでコロナ感染者が再び増加していることもあって、「時期尚早ではないか」と批判する向きもある。

 政府のやることに賛否両論があるのはいつものことだが、今回はコロナ禍、そして自然災害の中での事業実施だけに関心も大きいようだ。仮にGo Toを実施したから感染が拡大したといわれれば、観光業そのものが非難の対象となりかねない。そうした事態は絶対に避けたい。政府にうまくコントロールしてもらうしかないのだろうか。

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