【観国之光 286】Go To Travel キャンペーン ポストコロナ見据えて 本社論説委員 内井高弘


新型コロナ禍が1日も早く終息し、観光地ににぎわいが戻ってほしい(写真はにぎわっていた頃の東京・浅草の風景)

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。14日現在、感染者は46都道府県で計7978人、死者は157人になっている。PCR検査数がもともと少ない中でのこの数字、「感染者はもっと多いだろう」というのが率直な思いだ。

 自粛要請が相次ぎ出され、観光地などに足を運ぶ人もめっきり減った。訪日客の激減と相まって、観光業界は大きな打撃を受けている。廃業や倒産を余儀なくされる事業者も出ている。一刻も早い終息を願うばかりだが、ポストコロナをにらんだ動きも出ている。

 政府はコロナ終息後を「V字回復フェーズ」と位置付け、7日には2020年度補正予算案に、国内での感染症終息後に早期に実施する観光需要喚起策「GO To Travelキャンペーン」事業として、観光予算では前例のない1兆3500億円を計上した。

 官民一体の大型キャンペーンで、約半年にわたって全国を対象に実施する。

 柱となるのは冷え込んでいる旅行需要の喚起策だ。消費者に対し、宿泊・日帰り旅行商品代金の2分の1相当、1人1泊2万円を上限に補助する。また、観光地での消費を促すため、旅先での買い物や飲食、観光施設などで使えるクーポン券も配布する。

 キャンペーンの需要創出の目安としては、宿泊旅行で5千万人泊程度の喚起を見込んでいる。

 このキャンペーンと並行して、外食需要を喚起する「GO To Eatキャンペーン」、イベントやエンターテインメントのチケット代を割り引く「GO To Eventキャンペーン」なども実施する予定だ。

 感染防止の徹底、中小企業などの事業の継続や雇用の維持への支援策に注力した後、国内で感染症の終息が見られた時点で早期に開始するという。

 キャンペーンの成果が期待されるが、一方で、「ポストコロナなんて考えられない。今を生き延びることで精一杯」と切実な声もある。

 外出を避け、自宅で過ごす時間が長く続き、ストレスがたまっている人も多いだろう。終息後、「旅行でも行って発散しよう」という動きが出てくればいいが、観光客の心のどこかに「感染するかもしれない」という心配があれば二の足を踏みかねない。不安をどう払しょくするのか、観光従事者は真剣に考えてほしい。

 観光産業は裾野が広く、衰退は地域経済や雇用などに影響を与える。政府がこの先も観光を成長戦略と位置付けるなら(位置付けるべきだ)、業界が衰退しないよう可能な限りの手立てを講ずる必要がある。

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