住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されて1カ月半ほどが経過。都道府県などに届ければ自宅の空き部屋やマンションなどに有料で旅行者を泊める「民泊」ができるようになったが、届け出は伸び悩んでいるようだ。
観光庁の集計によると、7月13日時点の届け出件数は5867件、うち受理済み件数は4410件となっている。観光庁は「(民泊新法が施行された)6月15日以降、申請が多い平日は1日約100件ずつ増えている。今後も届け出は継続的に増えていく」(田村明比古長官=当時)との見方だが、規制の縛りもあり、低調に推移しているとの印象を受ける。
民泊新法は規制を緩和することで宿泊の受け皿を増やすと同時に、違法(ヤミ)民泊を排除し健全な市場を形作る制度である。しかし、届け出の低調さは依然としてヤミ民泊が横行していることを意味している。
6月、大阪市内で民泊をアジトにしていた特殊詐欺グループが摘発され、住居、職業不詳の男3人が逮捕された。この民泊、国家戦略特区制度に基づいて市が認定した特区民泊施設という。
全国紙によると、施設は家主不在型で管理人は常駐していなかった。宿泊客には玄関先のキーボックスの暗証番号を伝えて鍵を受け取ってもらうシステムで、施設側が詐欺集団のメンバーと顔を合わせることは一度もなかったとか。
違法民泊ならいざしらず、正規の手続きで認められた施設が犯罪に利用されたわけで、危機管理のあり方を真剣に検討すべきだという声も出ている。
捜査関係者は「民泊は不特定多数の人物が出入りしていても近所から怪しまれにくい。詐欺集団にとってはそれが利点になる」と指摘している。
大阪市は4月に市長をトップにした「違法民泊撲滅チーム」を設置、6月には環境衛生監視員と警察官OBから成る「違法民泊指導実働部隊」を発足させた。実働部隊は違法民泊施設に対し、法令順守を促し適法民泊へ誘導するとともに、無許可で営業する民泊施設の徹底排除に取り組む。
民泊は監視の目が届きにくい。運営業者がどこまで現場に介在するのか、プライバシーの問題もあってなかなか難しいだろう。その意味では公的機関である大阪市のような対策が求められそうだ。
民泊に厳しい目を向ける京都市は地域住民の民泊に係る不安や困りごとに対して適切な助言を行う「民泊」地域支援アドバイザー制度を発足、7月末にアドバイザー任命式を開催した。アドバイザーは建築士や行政書士、京都観光まちづくり公社の代表らで、総勢11人となっている。新法施行後も民泊の動きに目を光らせたい。
民泊は外国人旅行者の受け皿と期待されているが(写真と本文は関係ありません)