【観光関連団体トップ 新年あいさつ】地熱開発のリスクに警鐘 日本温泉協会会長 笹本森雄


笹本会長

 皆さま、新年明けましておめでとうございます。

 2024年の年頭にあたり謹んで新年のごあいさつを申し上げます。皆さまには平素より当協会へのご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。

 ここ3年間にわたり猛威をふるってきた新型コロナウイルスが第5類感染症に分類され、やっと観光業が息を吹き返すことができそうな気運が漂ってきていますが、インバウンドにおいても国内旅行においても、回復の兆しは見えるものの、力強いものではありません。このような状況の中でありますが、日本温泉協会では昨年は岡山県・湯原温泉において総会を開催することができました。これを次の一歩への歩みとしていきたいと思います。

 さて、日本温泉協会では、本年は次の3点を主題として活動していく所存でございます。

 まず、地熱開発は慎重に。温泉地周辺での地熱発電開発は温泉源に影響が出る可能性があり、慎重に議論していただきたい。地球温暖化防止のため、CO2削減は避けて通れない問題です。反対のための反対をするつもりはありませんが、温泉事業者と地熱発電事業者は同じ熱源をもとに事業を行っています。地下のことは推測に過ぎず、北海道蘭越町で温泉が噴き出した問題をはじめ想定外のことが大いに起こり得ます。そこで日本温泉協会では五つの提言を行っています。(1)地元(行政や温泉事業者等)の合意(2)客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設(3)過剰採取防止の規制(4)継続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底(5)被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化。今後も温泉源に影響を及ぼす可能性がある大規模な地熱開発には警鐘を鳴らし続けます。

 次に、日本の温泉文化をユネスコ無形文化遺産登録へ。高崎商科大学の熊倉浩靖特任教授の発案から始まり、鹿児島県・指宿温泉で開催された日本温泉協会の19年度会員総会において、岡村興太郎常務副会長(当時・群馬県温泉協会会長)からの提唱が満場一致で採決され「日本の温泉文化をユネスコ無形文化遺産登録」を目指す活動が始まりました。その後、コロナ禍の中で活動が思うように運ばない中、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本旅館協会と手を携え「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産全国推進協議会を設立し業界団体として活動する体制を整え、また当協会顧問の中曽根弘文参議院議員(全国温泉振興議員連盟会長)、山本一太群馬県知事のご尽力により政治の面から強力な支援をいただいております。温泉文化は日本の大切な無形文化遺産と捉え国内外に日本の温泉の素晴らしさを伝える良い機会です。登録実現に向けて全国に活動の輪が広がるようさらなるご協力をお願いいたします。

 第三に、「温泉検定」の実施を通じて温泉事業者、温泉利用者への啓蒙活動も継続してまいります。温泉検定とは、日本の温泉についてさまざまな学問的アプローチで研究された成果を学習することによって、温泉に関する知識を深め、日本の温泉文化を国内外に紹介できる人材を育成し、日本の観光と温泉地の発展、国民の健康増進に寄与することを目的として実施いたします。

 最後になりましたが、当協会は29年に迎える創立100周年に向け、本年もまい進してまいりますので、引き続きのご支援ご鞭撻(べんたつ)のほどよろしくお願い申し上げます。

 来年度はコロナの後遺症も癒え、明るい兆しも見えてきます。われわれは行政・関連団体の方々とも同じ歩みをしつつ、再度復興することを願ってやみません。皆さま方のますますのご健康とご繁栄を祈念いたします。

 
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