
安田会長
明けましておめでとうございます。なぜかあっという間に、1年が過ぎ、新年を迎えました。日本はかつてない円安で、海外からのツーリストであふれ、百貨店が空前の売り上げを更新しております。観光地ではオーバーツーリズムという話も聞かれますが、コロナ禍で痛めつけられたホテルや旅館、料理屋にとっては黒船の到来のようで、ありがたい話でございます。
小生は3、4年海外旅行をしておりませんでしたが、久しぶりに、狂言方人間国宝・野村萬さんの「日経能パリ公演」を見に行くことができました。野村萬さんが93歳ということもあり、中止の可能性もあるのでは?とお嬢さまに連絡をとりました。「父は、みっともないものはお見せする訳にはいかないと、毎日しっかり稽古に励んでおります」というご返事。小生も、パリがラグビーのワールドカップの時期で、しかも円安という逆風でしたが、これは応援に行かねばなるまいとパリ行きを決心致しました。
9月23日シテ・ド・ラ・ミュージックという音楽博物館などが併設された劇場で、夜の20時開演でございました。
演目は狂言が「清水」もちろん太郎冠者・野村萬、主人・野村万蔵でした。お話は、明日の茶会の準備に、主人が太郎冠者を、野中の清水まで水くみに行かせるのですが、太郎冠者は常々便利に使われていることを不満に思い、主人に鬼が出たとうそをつき、逃げ帰ります。太郎冠者と鬼の二役を野村萬さんが演じ、とても93歳とは思えない声の張りと、絶妙な間合いでの主人との掛け合いは、さすが人間国宝でございました。
終演後楽屋にお邪魔いたしましたが、「日本からよく来てくれた」と大変なお喜びでございました。野村萬さんは日本芸術院院長にご就任ということで、ますますのご活躍が期待されるところでございます。
せっかくパリに来たのだからと、オルセー美術館やルーブル美術館ものぞいて参りましたが、中国や韓国の方が多く、スマホを掲げ写メの撮りまくりで、モナリザなど全く近寄れず、切手の大きさくらいに見えるジョコンドを遠目で眺めたりでした。それにしてもルーブル美術館のスケールの大きさに圧倒され、翼を広げたサモトラケのニケ像との再会を喜んだりで、何時間いても飽きない感じでございました。
今回のパリでどうしても見たかったのが、安藤忠雄氏が18世紀の建築のパリ商工会議所を改造したピノー財団の現代アート美術館”ブールス・デ・コメルス”でした。中央天井の巨大な天窓を残しながら、ホールの中央にコンクリートでシリンダー状の回遊展覧スペースを創作し、壁面のフレスコ画を360度間近で展覧できる圧巻の素晴らしさで、さすが世界の安藤忠雄といわれるゆえんでございました。
帰国後、ハマスによるテロ事件やイスラエルのパレスチナ爆撃など、途端にきな臭い様相が生まれ、「安田さんは良い時に来た」と言われました。パリはアラブ人の移民も多く、反ユダヤのテロ事件の危険も増え、いつ何が起こるか分からないと、友人も不気味な恐怖を語っておりました。世の中が平和であればこそ、インバウンドやアウトバウンドも成り立つわけでございますので、世界が平和で安全であり、今年のパリ・オリンピックが無事に開催されますことを願ってやみません。