【観光業界人インタビュー・DMO成功への秘訣 29】山口県観光連盟 会長 松村孝明氏に聞く

  • 2018年11月26日

松村会長

マーケティング統括配置 観光客多い隣県とも連携

 ――日本版DMO登録の背景は。

 「山口県は、広島県と福岡県の大きな都市に挟まれており、また、人口減少も進んでいる。しかし、歴史など先達の多さや食、絶景、温泉など多くの観光素材があり、話題性は決して劣っていない。交流人口を増やし、観光を推進するため、2015年12月にDMOの形成、確立を位置付ける『おいでませ山口観光振興条例』が制定され、山口県観光の現状、課題の整理、分析などを目的とする基礎調査などを行った。16年4月には、日本版DMO候補法人に登録し、『やまぐちDMO』を発足。組織内に海外事業部を設置したほか、定員を補強するなど体制を整えた。また、県においては観光推進体制を強化するため『観光スポーツ文化部』が新設された。観光立県山口は十数年前からうたわれており、産業、県民が同じ方向を向いている。連盟が推進役を担い、オール山口で観光振興に取り組んでいる」

 ――主な取り組みは。

 「DMO形成、確立に向けた機運の醸成、地域の観光振興を担う中核人材の育成等を図る『やまぐちDMOフォーラム』を開催。16年に10回(1027人参加)、17年に3回(227人参加)実施した。体制の充実、強化にも取り組んでいる。17年4月にDMO推進部を新設したほか、18年4月には、国内事業部と海外事業部を統合し、誘客・プロモーション部を新設。さらに、専門人材として、データ収集・分析、誘客プロモーション戦略の構築・推進を担う『マーケティング統括(CMO)』を配置するなど、16人体制となっている。そのほか、基礎調査結果やフォーラムでの議論等を踏まえ、17年3月に『やまぐちDMOツーリズム戦略』を策定。国内外の地域、年齢層など主要ターゲットを設定したほか、フォーラムの議論も踏まえ、四つの経営方針((1)『やまぐちらしさ』を磨き上げ、ブランド力を高める(2)徹底したマーケット志向で売り込み発信力を高める(3)観光旅行者の満足度を高め、おもてなし力を高める(4)多様な関係者の連携を促進し協創力を高める)を掲げている。また、マーケットを徹底的にリサーチ。DMOの新たな視点からのデータ収集や旅行者マーケットなどの調査、分析をしている。このほか、地域における観光コンテンツの開発や観光客の受け入れ環境の整備などの取り組みを支援する補助制度の創設や山口DC、明治維新150周年に向けた受け入れ態勢整備、大都市圏での情報発信会の開催、観光素材集の作成、薩長土肥連合による共同プロモーションなどに取り組んでいる」

 ――KPIは。

 「20年度を目標に九つの項目と数字を掲げている。主なKPI(カッコ内は17年度現状値と20年度目標値)は、(1)観光消費額(1449億円、1500億円)(2)延べ宿泊者数(444万人、550万人)(3)外国人延べ宿泊者数(11.7万人、20万人)(4)来訪者満足度(15.7%、30.0%)(5)リピーター率(73.6%、78.0%)(6)年間観光客数(3318万人、3300万人)。他にも「フェイスブックいいね!数」や「会員数」など独自のKPIを設定。目標の達成状況の要因を整理し、分析・評価をしていく」

 ――インバウンドは。

 「戦略として、韓国、台湾、香港、中国(上海)、タイを重点市場として、各国、地域にプロモーターを配置し、山口県国際観光推進協議会と連携して、外国人観光客の誘致拡大に向けたプロモーション活動を展開している。また、365日24時間対応の多言語コールセンターの設置、無料Wⅰ―Fⅰ『やまぐちFree Wⅰ―Fⅰ』の環境整備、普及促進など受け入れ整備も進めている」

 ――組織の目標は。

 「DMOの主な役割として、(1)幅広い関係者の合意形成による観光推進体制の推進(2)専門性のあるマーケティングに基づく、全県での戦略の共有と訴求力の高いプロモーションの展開(3)県内の観光地域における魅力的で競争力のある観光地域づくりの取り組みのけん引―の三つを実施し、結果を出すことだ」

 ――課題や問題点は。

 「まずは、延べ宿泊者数、来訪者満足度の向上だ。宿泊者数は、全国の中でも下位を推移し、満足度は目標を下回っている。受け入れ整備やコンテンツの拡充により数字を伸ばしていく。増えるインバウンドに対する独自データも取れていない。県と連盟が役割分担し、誘客促進、情報発信、受け入れ環境整備を展開して対応していく。山口県だけでなく、観光客の多い隣県や広域連携DMOなどとも連携して取り組んでいきたい」

 ――DMOが成り立つには。

 「まず、財源の確保だ。収入の約9割を県の補助金が占めているが、正会員の拡大や賛助会員制度の創設による幅広い分野の観光振興への巻き込みや民間予約サイトと連携した体験、宿泊の地域コンテンツ商品の開発、販売促進などによる自主財源の確保が必要だ。また、人員体制の強化も必須。全職員16人のうち、プロパー職員は2人。資格取得の支援などにより、専門性の高いプロパー職員の育成、確保にも取り組みたい」

 ――今後の取り組みは。

 「DMOの機能を今以上に発揮する。世界水準のDMOを見据え、萩DMOやせとうちDMO、九州観光推進機構など他の観光関係組織とも連携しながら、重層的で効果的なマーケティングを展開していきたい。また、体験型観光コンテンツの充実など、観光客の満足度を向上させる取り組みも強化し、観光客が再び山口を訪れたいと思ってもらえるようにしたい。来年からは、新観光キャッチフレーズ『YAMAGUCHI MAGIC!』のもと、『やまぐちを訪れると心が洗われる・癒やされる・元気になる・新たな気持ちになる・みんなリフレッシュできる』と感じていただき、不思議な力(MAGIC)が生まれる場所として、『これが、やまぐちマジック!』と言えるよう、これからのプロモーションに取り組んでいきたい。どんなMAGICが出るかも期待してほしい」

まつむら・たかあき=萩本陣代表取締役社長、萩市観光協会名誉会長などを務める。12年5月から現職。

【長木利通】

 
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