【観光業界人インタビュー・DMO成功への秘訣 23】全日本空輸 マーケティング室 観光アクション部 部長 藤崎良一氏に聞く

  • 2018年9月5日

藤崎部長

魅力の持続的な発信が必用 訪日客の国内線利用増やす

 ――ANAグループの地域創生への取り組みのきっかけは。

 「『観光は地域創生の切り札』と3年ぐらい前から言われ始めた。地域創生が進み、交流人口が増えないと商流や地域での財源は生まれず、全日本空輸(ANA)の国内線も現状維持が難しくなると危機感を持っていた。交流人口を増やすためには、人口減少が進む日本への対応として、今後は増加する訪日外国人の乗客を増やす必要がある。これまでANAグループでは、ANA総合研究所やANAセールス、全日空商事、ANAビジネスクリエイトなどそれぞれが観光に携わっていた。そこで総合的にまとめる部署として、昨年10月にマーケティング計画部の『インバウンドツーリズム推進チーム』とANAセールス販売計画部販売促進課を統合し、『観光アクション部』を新設した。観光振興の旗振り役として機能する組織であると同時に、観光関連機関に対するグループ内窓口機能を果たし、ANAグループの収益への貢献や日本全国の観光の盛り上げに取り組んでいる」

 ――観光アクション部の取り組みは。

 「観光アクション部は、『観光の窓口チーム』『観光振興チーム』の二つのチームを設け、機動力ある組織を運営している。観光の窓口チームでは、観光戦略の企画立案のほか、観光庁や日本政府観光局(JNTO)など観光関連機関との調整や訪日関連プロモーションの企画・実施、訪日旅行、観光政策に関する渉外業務などを担っている。観光振興チームでは、日本市場における国内線の販売促進に関する調整や統括管理を行っている。また、増加する訪日客や地域活性化を支援するプロジェクト『Tastes of Japan(TOJ)』の運営事務局なども担っている。以前は、訪日旅行が増加しても、訪日客に国内線の利用を大きく促していなかった。まだ、訪日客の国内線の利用は全体の数%でしかない。国内外の支店のサポートを行い、訪日客の需要掘り起こしと国内線利用の活性化に取り組んでいく。地域に目を移すと、訪日客への対応として、国や自治体の助成金によるインフラ整備などは徐々に進むが、まだまだ足りていない。観光アクション部では、地域や観光関連機関と協働し、ANAグループの組織力を生かした観光促進事業に取り組み、地域への誘客を拡大させたい」

 ――観光アクション部の目標は。

 「海外での国内線の販売拡大が大きなミッションだ。国際線は1986年から始まり、数年後は国際線のシェアは国内線を上回る勢いだ。一方、国内線はまだ比率の低い訪日客が今後は柱となるように、地域の活性化を行いながら成果を出していきたい」

 ――地域の課題、問題点は。

 「PRの横並びが目立つ。外から見ると、地域はどこも同じような素材を同じような形で紹介している。訪日客から見ても同じだ。欧米やアジアでの観光への取り組み事例を参考にしても、簡単には会心の一打となる施策は出てこないだろう。各地域が素材の掘り起こし、インフラ整備、交通手段を充実させ、他の国や地域とは違った地域の魅力を持続的に発信し続けることが大事だ」

 ――地域が観光で成り立つには。

 「将来のビジョンを持つことだ。観光以外の場所でも人が訪れ、人が仕事を作り、住み着くなど複合的な計画が理想だ。観光事業者だけでなく、観光以外の産業の人たちとも一緒に議論を重ね、何をすべきかを決めなければならない。行政からの助成金を活用した事業だけに頼ることなく、地域ならではの独立した財源も考えて作り出していかなければならない」

 ――DMOへの支援は。

 「人材の派遣やデジタル技術の提案、機内誌、ホームページを活用したPRの支援などを行っている。ANAグループの資産を生かし、地域が一番良くなる企画をコーディネートして提案、実施している。最近は、ウェブサイトを使用して告知をしたいという声が多い。5月には、九州の観光事業者とTOJ企画を使用して九州の情報発信を推進する発表会を行った。熊本・天草『﨑津集落』の非日常な風景や大分・豊後高田『岬かき揚げ丼』などまだまだ知られていない九州の魅力を発信したりしている」

 ――DMOが取り組むべきことは。

 「広域での連携だ。私が海外で勤務していたときから感じていたが、観光客が海外旅行する際には、一つの観光地をピンポイントで訪れることは少ない。欧米の人たちは、九州の阿蘇を見た後、バンコクにも立ち寄ったり、アジアの国を複数訪問する人もいる。3月にドイツ・ベルリンの旅行博を訪ねた際にも、極東である日本を訪れる人は一生に1、2回という人が多いと聞いた。広域の移動を紹介しながら、自身の地域も訪れてもらう仕組み作りが必要だ。私が理事を務める山陰インバウンド機構では、山陰2県が連携し、5空港を生かした観光周遊ルート『縁の道』の案内などを進めている」

 ――今後の取り組みは。

 「地域創生の取り組みを加速する。社会の流れが変わり、飛行機や鉄道、旅行の予約はインターネットが中心となった。地方では旅行代理店が減少傾向にあり、旅行代理店よりも、自治体の方と話をする機会が増えている。その中で新しい取り組みが生まれ始めている。郷土料理や独自の文化、景観などを楽しみながら温泉街を歩く『ONSENガストロノミーツーリズム』は、ANA総合研究所が中心となり事務局を運営し、昨年は16カ所で開催した。今年はその輪が広がり、26回(8月20日時点)の開催を予定している。今まである素材を継続的かつ安定的に利用することはもちろん、現存する観光素材に横串を刺すなど新しい素材作りに発展させることが、国内客、訪日客を呼ぶうえで、ますます重要となる。ANAグループにいる4万2千人の人材、経験、手段などを駆使して可能にしていく。また、1回の取り組みだけで諦めてはいけない。海外での有名な観光地も継続してPRに取り組んでいる。地域には、多くの観光素材が埋もれている。われわれは、地域と一緒になり、盛り上げていきたい」

ふじさき・りょういち=1988年ANA入社。営業、空港、広報、海外支店(ベトナム)での勤務を経て、2017年10月に観光アクション部設立に伴い現職。

【長木利通】

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