【観光業界人インタビュー・DMO成功への秘訣 17】みなかみ町観光協会 代表理事 深津卓也氏に聞く

  • 2018年6月6日

接点増やしリピーター化 異業種連携で横の絆作る

 ──DMO立ち上げの経緯は。

 「観光に関する組織が町の観光商工課、観光協会、商工会、旅館組合と四つあり、それぞれの役割が不明確の面もあった。平成27年、町は町の活性化策として観光振興を挙げ、35人の異業種の人を交える『みなかみ観光会議』を立ち上げた。『観光資源の価値を最大化』、訪れる人へ感動を提供するとともに『世界の観光地みなかみ』の枠組みを作ることを目的として定められた。観光協会を中心とした町の観光振興への枠組み改革が進む中、同じ頃観光庁からDMO候補法人の募集があり、組織の目指す方向性が同じであることから、応募し平成30年3月地域DMOに認定された」

 ──DMOの考え方は。

 「5カ年のマーケティング計画を策定。柱はブランディング、デジタルマーケティング、インバウンドの三つだ。関わる人すべてが、理念と目的を共有し、来訪者へ最高の思い出作りを提供する。物質的な『モノ』の提供よりも『空間や記憶、想い出』という金で買えない時間を提供する。目的は、『みなかみのファン作り』であり、地域の人や温泉などの資源を最大限アピールする。地域の人が自分が住む場所の良さを理解し、誇りを持って案内することが必要。誇りがないと本物の観光地は作れない」

 ──観光振興を進める上で必要なことは。

 「リピーターを増やすことだ。増やすには客との接点が大事。以前、ニュージーランドのクイーンズタウンを視察で訪れた。みなかみと同規模で人口2万人ぐらいの町だ。アドベンチャーツーリズムが盛んで、ホスピタリティマネジメントの取り組みができていた。担保されるべきサービスの質が観光地には求められ、品質保証の重要性に気付かされた。観光地は、作られたものをそぎ落とすと、大自然と人の素晴らしさへとつながる。そこに、食やアートなど感動を与えるものを人が介在して作り出している。今ある自然などの素材に何倍もの付加価値をつけなければならない」

 ──現在の取り組みは。

 「キャッチコピーは『Find your Oasis』。利根川源流のみなかみは『ウォーターシャングリラ(水源郷)MINAKAMI』をうたい、温泉やハイキングなど『リフレッシュ』できる憩いの場を提供している。情報発信は、SNSや動画を使用。冬のスキーや雪遊び、ローカルガストロノミーを交えた内容で、1分にまとめた動画を日本版、外国版と用意している。誘客の主なターゲットは関東近郊20〜30代のミレニアム世代の女性。将来、子どもが生まれた時、初めて温泉やスキーに連れていきたいと思う人たちだ。SNSなどの情報に敏感で共感タイプのこの世代に情報を提供し、訪れてもらう。インバウンドは、台湾、タイ、インドネシア、シンガポール、オーストラリアの五つがターゲット。みなかみは、台湾・台南市と友好都市協定を結んでいる。町からも1人出向し、情報や文化交流のパイプ役を担っている。また、旅行会社200社を束ねる台南市旅行商業同業公会とも契約、アンテナショップや着物の着付けをPRするなど営業を掛けている」

 ──他組織との連携は。

 「雪国観光圏と連携を進めている。サクラクオリティなど品質保証やガストロノミー、A級グルメの展開、顧客満足度の調査など、共にできるものは協働して実施する。そして、雪国の知恵をブランディングの最大のキーワードとして、歴史、文化に興味の高い、外国人の誘客に力を入れている」

 ──組織の目標は。

 「2022年に年間130万人の宿泊客を達成することだ。そのうち、外国人は8万人。達成にはサービスのレベルなど観光地としての質の向上が必須となる。Wi—Fi、クレジット対応などインフラ整備を進めるほか、2次交通はUBERなどとの連携も視野に入れ整備を進めたいと考えている。観光素材は、温泉に加えて、大自然の山や川を生かしたアドベンチャーツーリズムや地元の歴史、文化、習慣を取り入れた田舎暮らし体験の提案を進める。町には、みなかみ町体験旅行という農泊や海外の学生受け入れを行うDMCもあり、連携して取り組む」

 ──組織に何が必要か。

 「マーケティングだ。協会にはマーケティングや調査を実施する観光戦略課を設けている。ウェブを使い会員情報のデータから経済効果の検証も行う。会員には、座談会や公聴会、会報紙にて情報を発信し、ステークホルダーとなる人たちからも高い関心を持ってもらう努力をしていく。イベントは収入源として実施しているが、経済効果を計り、データを蓄積して効果測定を行い次につなげる。DMOがマーケティングし、DMCで地域が稼ぐという仕組み作りが大切だろう」

 ──地域の課題は。

 「プレイヤー不足を解消しなければならない。地元での人材発掘も必要だ。今年から観光人材育成の委員会を設けた。合同入社式や研修を行い、教育と交流を実施している。結果、離職率ゼロを継続している。宿泊業、飲食店、アウトドア会社など多様な業種と連携し、横の絆を深めている。また、財源を増やすことも課題の一つ。現在は入湯税の80%が財源。一部は、源泉の保護、温泉の適正利用、温泉の価値向上のために使用する。入湯税の他に、会費収入、主催事業として行うバンジージャンプ事業が収入源だ。何をブランドとして押し出すかを住民と一緒に考え、観光地域づくりを展開していきたい」

 ──今後の取り組みは。

 「2020年4〜6月に群馬でデスティネーションキャンペーン(DC)が決まった。昨年6月に認定された世界基準のユネスコエコパークとして、自然と人との共生の魅力をどれだけ磨いて具体的に提案できるか。みなかみの春は弱い。雪解けの水や新緑、ホタルなど『春を伝える田舎で見る新緑』をアピールしたい。また、凸版印刷とヘルスツーリズムに取り組んでいる。『Go wild in MINAKAMI』を掲げ、食やアウトドアを通じて内なる野生を呼び起こし、心身ともにリフレッシュできるoasisを目指す」

【ふかつ・たくや】
早大卒。三井物産を経て1991年ホテル辰巳館入社、専務。2006年から社長。群馬県温泉協会専務理事など公職多数。

【聞き手・長木利通】

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