【観光業界人インタビュー】JATA会長 田川 博己氏


JATA会長 田川 博己氏

JTBから12年ぶりに就任

海外、国内、訪日の旅行を 三位一体バランスよく発展

──新会長としてJATA(日本旅行業協会)の役割をどう考える。

 「観光についてこれだけ国や観光関係者が盛り上がっている時期は初めて。その中で、海外、国内、訪日の旅行事業を三位一体でいかにバランスよく前へ進めるかということが大切だ」

 「社会貢献も大きな役割で、一つは、東北については『忘れない』、復興に継続的に取り組む。東北以外の観光地でも自然災害などで傷んでいる所はたくさんあるから、それをどう支援するのかという課題もある」

 「JATAは中小の旅行会社の会員が多い。経営が難しい会社もある。経営課題についてもしっかりフォローしていきたい」

──3人体制にした副会長にそれぞれ担当させるなど、三位一体の取り組みを強く打ち出している。

 「国内旅行をやる人も海外旅行をやる人も、常にインバウンドを意識しないといけない。国内旅行のバスとインバウンドのバスに違いはない。インバウンドにとられて修学旅行のバスがないということが、これからたくさん起きる。航空座席が、帰国する訪日旅行客で埋まり、日本人が海外旅行に行く便もなくなる。今後、訪日旅行者が2千万人になるというのは、そういうこと。400万人ぐらいのときは、そういう相関関係を考えなくてよかった」

 「マーケットを作るために努力するのがJATAの仕事だ。マーケットができれば、大手、中小を問わず旅行会社の生き残る道が必ずある。ただ広げるだけでなく、価値の高い需要を作り出す。規制緩和や法制度、人材確保などを三位一体で考えることが、ツーリズム業界を発展させるための条件だ」

──JTBからの会長は12年ぶりとなる。

 「三位一体のことを熟知しているのは旅行業界だけで、バランスよく発展できるように全体をまとめることがJATAには求められる。JTBの役員として14年間やってきたノウハウを、業界の立場でニュートラルに発揮していきたい」

──会長は今年になって「観光立国から観光大国へ」という発言をしている。

 「立国というとどうしても道筋を考えてしまう。大国というのは目標だから、観光大国になるためにどういう立国スケジュールを作るかということだ」

 「われわれは2020年に東京オリンピック・パラリンピックという大きな目標を与えられた。東京オリンピックは『オールジャパンでやろう』と言っている。16年の8月にXデイがある。それはリオデジャネイロ五輪での閉会式。次の開催地として『トーキョー・ジャパン』とコールされると、会場のイメージがリオデジャネイロから全部、日本に代わる。閉会式の様子は世界中の人が見ている。その時の会場のイメージをオールジャパンで表現できるかどうかが大事。そこから日本のイメージがスタートするからだ」

──JATAは海外旅行の旅行会社の組織と見られているが、一方、国内旅行の主要な会社が属すのもJATAだ。

 「実際、会員は国内旅行も海外旅行も扱っているという会社が圧倒的に多い。今までのJATAは本部主導だったが、一般社団法人になって、これからは本部と支部、地区が連携をとることが非常に重要だ。支部の会員には、国内旅行が中心のところも多い」

 「国内の旅行は今まで、景気動向にかかわらず安定的に推移してきた。だから、国内旅行委員会が解決を求められる問題は少なかった。だが、11年に東日本大震災が起き、国土が傷むのを初めて目の前にして、それが変わった。単に観光地の魅力を掘り起こして国内の旅行を活性化するだけでなく、一昨年の『東北復興支援1000人プロジェクト』のような再生事業も旅行会社の仕事だと認知された瞬間に、国内旅行委員会の位置付けがぐっと上がった。国内旅行について話す機会がその前と後でたぶん10倍ぐらい違う」

──9月には日本観光振興協会との共催で「ツーリズムEXPOジャパン」が初めて開催される。

 「国内旅行の活性化は今年のシンボルだ。これがうまくいかないと日本が観光大国になることはおぼつかない。ここで日本をもっと立体的に紹介したい。立体的というのは、日本は観光素材がたくさんあるが深掘りしていない。例えば、ねぶたと言っても、青森のねぶた、弘前のねぷた、五所川原のねぶた、みんな違う。文化の裏づけがある。外国から来る人、特に欧米から来る人はそういうことを知りたがっている。その語り部が本当はたくさんいなければいけないが、みんな地方にいて、東京にはいない。会期中の4日間で、人、物、土地、地域といった日本の文化を深掘りして見せていきたい」

【たがわ・ひろみ】

JATA会長 田川 博己氏

 
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