【観光業界人インタビュー】楽天トラベル代表取締役社長 岡武公士氏


楽天トラベル代表取締役社長 岡武公士氏

“再登板”社長のビジョン

「世界一」企業を目指す インバウンドが急拡大

3月29日付で山田善久社長が退任。楽天が買収した「旅の窓口」出身で初代楽天トラベル社長の岡武公士副社長が社長に返り咲いた。

──2度目の社長登板の抱負を。

 「96年1月に旅窓を立ち上げてインターネット旅行販売を始めた。当時からの一貫した目標は『世界一』。楽トラを旅行業界のトップ企業にしたい」

──楽天本体での肩書きは。

 「楽天執行役員。楽天バスサービス取締役会長、楽天ANAトラベルオンライン取締役も兼務している」

──各事務所はどうなっているのか。

 「楽トラと楽天バス、楽天ANAの3社は、仕切りのない同室で一緒に仕事をしている」

──山田氏退任の理由は。

 「山田氏は楽トラの社長を3年半務め、業容と業績を急拡大した。日立造船(旅窓)と楽天という全く異なる文化の社員同士の融合、ANAとの提携などで実績をあげた。楽トラの基礎固めという職責を全うしたということだろう」

──昨年10月に始めた楽天ANAの国内ダイナミックパッケージの販売状況はどうか。あまり安くないという声も聞く。

 「順調だ。新会社の楽天ANAも3月単月で黒字化した。計画通りだ」

──販売好調の利用は。

 「1万軒の中から宿を選べる。ANA便も自由に選べる。いわゆる『出張パック』より自由度の高い点が利用者から支持されている。旅行代金は組み合わせによって変わる。高い商品もあれば安い商品もある」

──貸切バス会社の過重労働による事故が社会問題化している。楽天バスの高速ツアーバスは大丈夫か。

 「楽天バスサービスは各旅行会社が募集型企画旅行で企画・実施する高速ツアーバスをネット上などで代売している。マーケットプレイスだ。旅行会社やバス会社には当社規定の品質基準満たすことを確認した上でご出店いただいている。国交省OBなどがメンバーの『安全検討委員会』も設けている」

──ローソン店舗のマルチメディア端末、ロッピーで3月から高速ツアーバスの予約販売を始めた。宿泊の予約販売はいつから始めるのか。

 「技術的には今すぐにでも可能だが、時期は未定。宿泊予約は携帯サイトでもできるし、現状は現地決済。事前決済が必要な旅行商品でなければ、ローソンで売る必然性はない。高速ツアーバスのようにロッピーに合った商品をこれから開発する予定だ」

──セレブ向け高級宿泊予約サービス「プラチナコレクション」を参画ホテル18軒で1月から始めた。旅館はまだ入っていない。

「この春に開く選考委員会で旅館も審査する」

──その選考委員は大江匡氏、佐藤可士和氏、残間里江子氏、長谷川智恵子氏、平松博利氏の5人。なぜ彼らが宿を選ぶのか。

「誰かが選ばなければならない。公平性を保つための人選だ」

──インバウンドサイトの実績はどうか。

「前年対比300%の伸びだ。楽トラの全事業の中で最も伸び率が高い」

──インバンド登録をしている宿泊施設の数は。

「約1800軒。うち1千軒以上が実際に客室登録をしている。部屋を売る宿の数が1年で倍になった」

──JTBが宿泊予約サイトに本格参入した。

「『るるぶトラベル』の動向には注目している。JTBの販路としての『ヤフートラベル』も見逃せない」

──JTBを抜かなければ日本一になれない。

「06年度(1月から12月)の宿泊者アンケート件数は129万5千件。既にJTBの05年度(05年4月から06年3月)分、55万4千件の2倍以上ある」

「06年度の取扱い宿泊人数は1891万人。JTBの05年度実績2521万人の75%に達した。人数は2、3年中に抜きたい」

「06年度の予約流通総額は1794億円で国内旅行の比率が高い。一方JTBの05年度旅行売上(取扱)高は1兆1232億円で、国内旅行売上高は6262億円。国内旅行で4、5倍の開きがあり、容易には抜けない。国内海外ダイナミックパッケージなどで販売単価も上がっている。追いあげていきたい」

【おかたけ・まさし】
47歳。84年龍谷大学経済学部卒、日立造船情報システム入社。96年プロジェクトマネージャーとして「ホテルの窓口(旧旅の窓口・現楽天トラベル)」を開発。02年楽天入社。

楽天トラベル代表取締役社長 岡武公士氏

 
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