【観光業界人インタビュー】日本旅館協会 会長 北原茂樹氏

  • 2018年7月5日

北原茂樹会長

日本旅館協会の会長に就任

競争の時代、諸課題に対応 生産性、電子決済で委員会

 ──14日の通常総会で会長に。就任の感想は。

 「前会長の針谷(了)氏が2期4年で協会の改革を進め、財務体質の改善、本部会費の軽減、生産性向上の事業などをやり遂げた。この成果を後退させることなく、少しでも伸ばしたい」

 ──協会運営の方針は。

 「インバウンドが3千万人時代に入り、政府はさらに上を目指している。その中で都市部を中心にホテルなどの建設が相次ぎ、民泊、簡易宿所などの宿泊サービスへの新規参入が増え、厳しい競争の時代が来ている。それぞれの地域で自治体、DMOなどの施策とうまく連携し、旅館・ホテルの魅力を世界に発信する必要がある。協会本部としても、観光庁や関係団体の力を借り、その成功事例を作り、会員に普及していく。同時に、外国人の受け入れ態勢の整備、バリアフリーの施設対応、そして先日も大阪府北部で地震があったが、災害時の安全確保など、さまざまな課題への対応がいや応なしに求められている。会員の経営に資する事業を展開していきたい」

 ──具体的には。

 「政策、IT戦略、電子決済、労務、生産性向上の五つの委員会を設置する。『政策委員会』は、改正旅館業法で旅館ホテル営業に種別が統合され、最低客室数の基準が撤廃されたので、会員資格の在り方を検討する。併せて観光立国推進の施策、接待などに関する旅館業の風営法適用除外を求める活動などに取り組む。『IT戦略委員会』は、メタサーチ対策としてのDRS(宿公式プランの直予約システム)の推進などIT関連の事業を担当するが、決済に関する課題は切り離して『電子決済委員会』を新設し、キャッシュレス決済への対応を進める。外国人雇用や人手不足、労基法の課題などを検討する『労務委員会』は継続するが、政府がサービス産業などの生産性向上を重要政策に掲げる中で、労務委員会から独立する形で『生産性向上委員会』を立ち上げる。いずれの委員会も担当副会長のもとで、委員長、副委員長、委員2人を選任し、7月からスタートする」

 ──生産性向上、外国人雇用では、政府は宿泊業に注目しているようだが。

 「厳しい競争、さまざまな課題に対応するには、生産性を高め、利益を生み出して、設備、人材に投資しなければならない。一朝一夕にはいかないが、人手不足の時代でもあり、政府の働き方改革などを踏まえ、委員会を中心に関係機関と連携して取り組みたい。外国人雇用は、政府の『骨太の方針』にもその方向性が示されたが、宿泊業での雇用、活用の在り方を勉強していきたい。外国人技能実習制度の宿泊業の対象職種化については、宿泊業4団体で『宿泊業外国人労働者雇用促進協議会』を作ってすでに検討を進めている。全旅連(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会)、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟としっかり手を携えて取り組んでいきたい」

 ──民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行された。

 「旅館・ホテル業界が民泊制度に意見を言うと、既得権益を守ろうとしているかのように言われることがあるが、私たちに既得権益などはなく、旅館業法の許可、その他多くの規制を受けて営業している。宿泊客の安全、地域の住民生活との調和を守るには一定の規制が必要。規制緩和が正義であるかのような風潮にも違和感を覚える。やはり社会秩序が大切だ。多くの自治体が民泊を制限する条例を制定したが、訪日客のリピーター確保でも、日本人の国内旅行促進でも、観光の質、魅力を維持するには一定の規制が必要だ」

 ──会員や関係者に呼びかけたいことは。

 「早期に結論を出すべき課題、じっくり考えるべき課題、地域間で温度差がある課題、これらを見極めつつ、会員に問いかけながら課題を解決し、皆さんの経営安定に資する環境を作りたい。旅館・ホテルはそれぞれの地域、伝統、文化を背負っている。これを継続させるのは大変なこと。これまでにもバブル崩壊などいろいろな波があったが、次の世代にしっかり経営を引き継いでもらえるようにしたい。関係機関にもご支援をお願いし、宿泊業が成長産業だと実感してもらえるよう成果を上げたい」

【きたはら・しげき】 
旅館こうろ(京都市、株式会社北原)代表取締役会長。関西学院大経済学部卒、家業の旅館を継承し、1981年代表取締役に就任。2011年京都府旅館ホテル生活衛生同業組合理事長、14年日本旅館協会副会長、15年全旅連会長など。68歳。

【聞き手・向野悟】

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