
日本旅行オーエムシートラベル社長 大野源一氏
リテール会社の今後
サービスレベルの向上で EC販売に「立ち向かう」
日本旅行グループの日本旅行オーエムシートラベルは、旧OMCカード(現セディナ・カード)と日本旅行の合弁による旅行のリテール会社として2004年に発足した。セディナ・カードの会員を中心に全国53店舗とカード会員へのビリング・インサート(利用明細書とともに旅行商品の案内を発送)による営業を行い、年間約220億円を売り上げている。ただ、インターネット販売との競争激化など、取り組むべき課題も多い。今年3月に専務から社長に就任した大野源一氏に今後の会社の経営方針を聞いた。
──昨今の営業状況は。
「震災から1年経ち、ようやく一昨年の2010年並みに売り上げが回復してきたところだ。ここ数年、08年のリーマン・ショックに始まり、09年の新型インフルエンザ、昨年の震災と、毎年のように市場を揺るがす大きな出来事があった。今年はようやく落ち着いてきたところで、売り上げを落とす外的要因がないことを願うばかりだ」
──会社の現状をどう認識するか。
「ご承知の通りリテーラーは、インターネットに相当シェアを奪われている。宿泊単品しかり、航空券しかり。毎年4%ほど浸食されているイメージだ。ネットと相性のいい旅行素材はリテールからどんどん離れており、この傾向は今後さらに顕著になるだろう」
「それに対し当社は、あえて『打ち勝つ』とは言わず、『立ち向かう』と言っている。別の言葉で言えば、『棲み分けを図る』」
──具体的に何を行うのか。
「CS(顧客満足)と従業員教育を徹底する。店舗のサービスレベルを上げることでEC販売との差別化を図る。今年に入り、従業員教育に力を入れている。外部の講師を呼んで接遇訓練を行うほか、社員には旅行関連の資格の取得を奨励している。取得に要した費用は会社持ちにしている」
「今までの旅行店舗のサービスレベルは、決して高いとは言えなかった。例えばお客さまが来店した時、社員が皆、立ち上がってあいさつをしているだろうか。サービスレベルをもう一段上げなければEC販売に対抗できないと、社員には強く言っている」
──店舗展開は。
「現在、北海道から九州まで、全国に53店舗。ダイエー(スーパー)の中が多く、一部ほかのSC(ショッピング・センター)にも入っている」
「かつてのように、フル装備でどんどん出店することは難しい。ただ、決して縮小再生産ではない。物件次第だが、軽装備とか、小規模でも出店すべきところはして、空白地帯を埋めていきたい」
───カード会員の顧客を持つことは御社ならではの強みだ。
「セディナ・カードの会員は当社の主なお客さまで売り上げの6割近くを占める。このお客さまをいかに固定化し、販売に結び付けるかが課題と言える」
───カードの会員数は。
「セディナ・カードの中で、当社の旅行商品が5%引きになるミベリーカードというのがある。この会員が現在、約10万4千人。ただ、その中で、消費行動にアクティブに動いているのは4万8千人ぐらいだ。その会員に、さらにリピートしていただく仕組みを考える。例えば、専用のホームページを立ち上げて、会員だけのお得な旅行商品を案内したり、イベントを開催するなどを考えている。実施に向けて動きつつあったが、震災で一時ストップしていた。今、仕切り直しで始動したところだ。当社独自の顧客管理、お客さまの顔の『見える化』を行い、独自のサービスを提供したい」
【おおの・げんいち】