【観光業界人インタビュー】日本ホテル協会会長 大橋寛治氏


日本ホテル協会会長 大橋寛治氏

インバウンド拡大策

原発の安全宣言が不可欠 格安航空の発展もカギに

──会長就任は東日本大震災が発生した3月11日からほぼ1週間後の17日だった。

 「大震災発生直後の状況下でのスタートとなった。こういう巡り合わせだが、正直に言って、自然体で受け止めるしかないと思っている」

──どういう進路をとっていくつもりか。

 「日本ホテル協会は今年で102年目と長い歴史を背負ってきているから、その伝統を尊重しつつ時流を外さずに最善を尽くしていく。協会会員のために実質的にプラスになるような運営をスローバットステディで続けていくことが一番重要なことだ」

── 今、個々のホテルが行うべき営業努力とは。

 「ホテルにいらっしゃるお客さまには、個人宿泊客、レストランなどの利用客、宴会場利用客、グループ客などがある。どのお客さまに対しても、ひたすらお客さまのニーズに基づいたサービスを積み重ねていくしかない。そのためには社員教育が極めて重要だ。設備も改善を続け、きちっとすることが大事だ。こういったことはどこのホテルでもやっている当たり前の話だが、やはり基本に忠実でなければならない。ニーズに合った対応をしないと『このホテルはもう使わない』とお客さまに嫌がられてしまうのは火を見るよりも明らかだ。小さな不満から良くない評判が人々に口伝えで流れ、ホテルの評価を落としてしまう心配がある」

──高級ホテルにとって外国人客も重要なターゲットだ。国として将来的に2千万人、そして3千万人へと拡大しようとしているが、今、東日本大震災の影響で激減している。

 「地震と津波による被害とともに原発の問題が存在している。原発問題が解決しないと日本の当面の観光事業はきわめて厳しい事態だ。基本的には政府が『原発』と『食品』の2つについての安全宣言をはっきりと出してもらわなければ、外国の人には信頼されず、日本への観光旅行は復活していかない」

 「日本の国の大きさはアメリカのカリフォルニア州より小さい。その小さな日本について、東京とほかの都市の距離を正確に知っている人はよほど特別な興味を持った人たちだけだ。だから、1カ所でも今回のようなことになると、日本の国全体が怖いところだと思われてしまう。世界にたくさんすばらしい観光地があるのだから、何も今、日本に行かなくてもいい、となってしまう」

──震災や原発の問題を除いて考えた時、外国人旅行客数を増加させるには何が必要だろうか。

 「物理的に日本は極東であり、欧米や中近東、あるいは西アジアというところからすれば、文字通り『ファー・イースト』で、距離がすごく長いわけだから、そこまでわざわざ行く大変さがある。これが気分的に解消されていかないといけない」

 「そこで1つには、格安航空(LCC)の問題がある。人々が海外に行きたくなった場合、安い運賃があるならば行こうと考えるのは自然の流れだ。格安航空は、それはそれでニーズがあるので、日本の航空会社も日本航空、全日本空輸、共に格安航空事業に参入しようとしているわけだ。格安航空が出てこないと日本への観光旅行は我々が期待するほど伸びていかないだろう」

【おおはし・かんじ】
1931年4月2日生まれ。1955年、同志社大学を卒業後、日本航空に入社。京都ホテル専務取締役、ホテル日航大阪社長、会長、相談役を経て2001年9月から森ビルホスピタリティコーポレーション(グランドハイアット東京)社長。11年3月から日本ホテル協会会長に就任。

日本ホテル協会会長 大橋寛治氏

 
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