【観光業界人インタビュー】日本ホテル協会 会長 中村裕氏

  • 2009年12月5日

日本ホテル協会 会長 中村裕氏

官民挙げて観光立国を

外国人のおもてなしに ノウハウと人を提供

──11月6日、協会創設100周年を契機として、観光立国の推進により一層協力していくと表明した。

 「宿泊産業として観光立国を積極的に支援するのは当たり前のことだ。特にインバウンドの促進に関しては、われわれホテルの参画が欠かせない。ホテルはそもそも外国からのお客さまをおもてなしするために生まれたと言っても過言ではないからだ」

──訪日旅行客を受け入れるために必要なものは。

 「われわれ日本人が海外に行って、ホテルで何を不便に感じるか。それは、何といっても言葉。だから、まずコミュニケーションが取れて、相手が望むことを理解して、きちんと提供できることが一番大事だ。英語はもちろん、中国語、韓国語でもコミュニケーションできるようにしなければならない。ネットサイトでの情報提供に加えて、パンフレットなどの印刷物も必要になってくる。ホテル従業員も母国語で話せる外国人を採用する。きちんと求めにこたえられるだけのコミュニケーションを取れるようにホテル協会でも指導していきたい」

──当面の目標として10年に1千万人を目指すビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)にはどのようにかかわっていく。

 「富裕層の開拓、MICEビジネスの拡大に積極的に参画していく。富裕層の誘致策としては、現地に出向いて、セミナーやキャンペーンなどに参加したり、富裕層を扱うエージェントを日本に招き、積極的に富裕層を受け入れられる宿泊施設だということをアピールしていく」

 「MICEビジネスは、ホテルが得意とする分野であり、ホテルがノウハウを一番持っている。そのミーティング、インセンティブ、コンベンション、展示会などのノウハウを広く提供して、世界でも日本はMICEの受け入れに優れているという状況を作っていきたい。昨年の洞爺湖サミットが一番の好例だ。ホテル協会では、経験のある42人を約10日間現地に派遣した実績がある。来年11月に横浜で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議では、サミットの倍以上の人が来る。手伝いが必要なら支援チームを組んで手伝う」

──これまで外部に対して力を貸すという姿勢はどちらかというと希薄で、メンバーホテルのための協会という色が濃かった。

 「そういう時代があったことは否めない。しかし、それでは、このスピーディーな世の中に付いていけない。私が12支部を回った時も『ホテル協会の存在感をきちんとアピールできないか』といった意見がたくさんあった。国を挙げてもてなすという態勢づくりが整いつつあるわけだから、われわれもインバウンド誘致に積極的に協力したい。これは宿泊産業だけではできない。航空業界、運輸業界、旅行業界などいろいろな業界を観光庁なりがまとめて、官民挙げて新しいマーケットを掘り起こさなければならない。その中でホテル協会は、インバウンドを誘致するためのノウハウを蓄積して、蓄積したものを皆さんに提供していく」

──一方、国内旅行の振興の面でも、地域と連携して地域の活性化に取り組むと宣言した。

 「両組織に具体的にこうしてほしいと言える段階ではない。ただ、観光立国の実現に向けて国には観光庁ができた。では民間の態勢はどうか。両組織の役割や考えを踏まえ、よりパワーアップできる機能的な形を考えていく必要はある」

──政府は独立行政法人の見直しを進めている。日本政府観光局はどうか。

 「国際観光に力を入れている韓国やシンガポールなどの政府観光局に比べ、JNTOは予算、人員ともに厳しいのが現状だ。観光立国の目標を達成するには、競合国に負けない態勢が必要だ。JNTOの役割や活動、これまでの成果を理解してもらい、その上で問題点については十分な検討をしてもらいたい」

──観光地域づくりはどう促進するのか。

 「地域の個性が何か、改めて考える必要があるのではないかと感じる。観光には話題性や時代への対応は絶対に必要だが、そこにアイデンティティがなかったら一過性で終わってしまう。風土や文化の普遍性は何かという見極めが大事だ。観光商品でも地元では差別化できたと考えても、全国からみたら埋もれていることもある。全国あるいは海外からみて、どうかという評価測定が重要。それには地域に人材と態勢ができていないといけない。地域の人材育成などは時間がかかるが、観光庁の最重要テーマの1つだ」

──旅館・ホテルなど宿泊産業への施策は。

 「日本の観光、地域文化を支えてきた旅館・ホテルには最大限の敬意を表したい。これから訪日外国人を2千万、3千万人に増やす上でもその力が欠かせない。年末年始にいくつかの旅館に泊まったが、経営の先行きについて不安を口にされていた。資金繰りなどの苦労も多いと思う。私も零細企業のプロサッカーチームを経営し、資金調達の大変さなどを経験した。どこまでできるかわからないが、金融や税制の問題、休暇分散化などの施策を含めて旅館・ホテルの方が安心して夢を持って働ける環境づくりに努めたい」宿泊施設による地域の活性化というと、湯布院や黒川温泉など地方の、旅館の方が目立つのかもしれない。しかし、これは地方だけの話ではなく、都市でもホテルと街との一体化で街を盛り上げようという状況になってきている」

 「地元とのつながりで言えば、ロイヤルパークホテル(中村会長が会長を務める)が一番いい例だ。スローガンに『地元密着』を掲げ、日本橋とともに成長していこうと考えている。下町の日本橋とインターナショナルホテルとではミスマッチのようだが、まず始めたのが、地元の飲食店メニューのバイリンガル化だ。外国人はだいたい3泊し、最低1回は外で食事をする。そこで、地元を紹介しようと、『翻訳のお手伝いをするので、メニューに英語表記を付けてほしい』と飲食店の皆さんにお願いした。好評を得て、メニューだけでは物足りず、英会話の授業もやってほしいということになった。やがて、都内在住の外国人が聞きつけて日本橋に興味を持ち始めた。地元も手ごたえを感じ、外国人と日本橋で江戸文化を学ぼうというNPO活動も始まった」

 「こうした地域活性化の実例を数多く作り、メンバーホテルに紹介する。それによって各ホテルでの実践につなげていきたい」

【なかむら・ゆたか】

日本ホテル協会 会長 中村裕氏

 
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