【観光業界人インタビュー】山口県宇部市市長 久保田 后子氏


山口県宇部市市長 久保田 后子氏

山口県宇部市の観光魅力

産業観光で銀賞を受賞 ときわ公園再整備着手

──宇部市はどんなところですか。

 「一般的には宇部興産に代表される工業都市のイメージが強いようですが、私は『緑あふれる工業都市』『海の幸、山の幸に恵まれた工業都市』と思っています。グローバル経済が進展する中で産業の裾野を広げていくのが課題で、豊かな恵みを生かした観光交流事業を2〜3年前から始めたところです。人口は約17万2千人。瀬戸内海の温暖な気候で暮らしやすいまちです。山口宇部空港、山陽自動車道宇部インター、重要港湾の宇部港、そしてJR西日本の宇部線などがあり、交通の利便性も高いのが特徴です」

 「世界遺産などはありませんが、工業都市として発展してきた過程に魅力があると思います。石炭使用量の増加に伴い、世界一といわれた降下煤塵(はいじん)環境問題に対し、産官学民一体となって公害問題を克服した『宇部方式』は、1997年には国連環境計画から『グローバル500賞』を受賞しました。また、市民一丸となった緑化運動や花いっぱい運動などの取り組みが、その後、さまざまな分野に幅広い展開を見せ、特に市内への彫刻設置事業は、国内有数の歴史と権威を誇る『UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)』へと発展し、半世紀を超える歴史を有しています」

──現在、観光客数はどのくらいですか。

 「12年で約73万8千人。前年比約14%増です。シンボル的施設のときわ公園には約42万人が訪れています。ときわ公園は県内最大の都市公園で、『日本の都市公園100選』や『21世紀に残したい日本の風景』で総合公園として第1位などに選ばれています。また、外国からは約5千人が来訪され、中国が一番多く、次いで韓国。特に韓国人は、ときわ公園の熱帯植物園の見学やゴルフで来られる人が多いですね。山口宇部空港と仁川空港間ではチャーター便が運航されているほか、関釜フェリーを利用し、下関から入られるようです」

──産業観光まちづくり大賞で銀賞を受賞しましたね。

 「宇部・美祢・山陽小野田産業観光推進協議会を組織し、取り組んでいます。第1回では特別賞を受賞しました。銀賞受賞はうれしく、産業観光エスコーターとしてツアーガイドをやっていただいている市民や、勤務時間を割いて協力いただいている企業社員の誇りとなります。今後は、県外からのツアー参加者を宿泊に誘導し、地域経済の活性化を図ることや新たなツアーコースの開発を含めたコースの見直し、エスコーターの確保・充実などが課題です」

──ときわ公園のリニューアル化計画もあるようですが。

 「市制施行90周年記念事業として、動物園ゾーンのリニューアルに着手しています。現在、12種類104頭のサルや、ペリカンなど9種類50羽の鳥類などを飼育しており、約19億円をかけて『アジアの森林ゾーン』『中南米の水辺ゾーン』などのほか、環境学習や動物との触れ合いの場として『学習施設ゾーン』などを整備します。来年春に一部オープンする予定です」

──UBEビエンナーレも歴史があります。

 「11年の第24回展で50周年を迎えました。彫刻によるまちづくりは日本では宇部市がその先駆けといわれており、現在では約200点の彫刻が市内やときわ公園に設置されています。第25回展では約5万2千人が来場しています」

 「50年の歴史の中で地元の彫刻家をまだ輩出していないのが残念です。第24回展では、本市在住の若い女性作家が一次審査を通過しましたが大賞までにはいたりませんでした。風土がありながら彫刻家が輩出されないのはもったいないですね。また、近代建築に最も貢献された建築家の村野藤吾さんの作品も本市に集中しています。まさに建築家にとって本市は聖地で、村野作品が現存している街としてもPRしていこうと考えています。ピアニストの辻井伸之さんにも、テレビの音楽番組で村野作品の宇部市渡辺翁記念会館の音響がすばらしかったと絶賛していただきました。ヴァイオリニストの五嶋龍さんも同じように言っておられましたね。1300人しか入らないし、建て直したらどうかという意見もありますが、国の重要文化財ですし、貴重な財産なので大切に活用していこうと思います」

──今後、観光面ではどんな施策を。

 「このように地域資源に恵まれていますから、これらを効果的に組み合わせたグリーンツーリズムやエコツーリズムなど『うべふるさとツーリズム』の創出、山口宇部空港を活用したツアーの実施のほか、うべまるごと元気雇用拡大プロジェクトが進めている農家民泊を含めた滞在型ツーリズムの開発などを積極的に推進します。観光面ではまだまだやることがたくさんあります」

【くぼた・きみこ】

山口県宇部市市長 久保田 后子氏

 
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