【観光学へのナビゲーター 27】コンテンツによる地域イメージとリスク 日本国際観光学会会員・追手門学院大学地域創造学部講師 安本宗春

  • 2020年7月1日

安本氏

 アニメやドラマなどのコンテンツは、人々の生い立ち、気候、自然、文化など実在する様々な情報を構成して作品を製作することがある。コンテンツ利用者は、作品が持つ内容に魅かれ、作品の中にとどまらず実際の様子を体感したいと望むことがある。こうした人々に向け、「コンテンツツーリズム」や「聖地巡礼」は、コンテンツの地域情報に着目し作品の追体験を目的とした観光の方策といえる。近年、一部の自治体では、地域情報をコンテンツの中に取り入れてもらうことを目指し、作品制作者と地域関係者を結ぶあり方を模索している。この目的は、観光客増加や地域情報発があげられる。

 ただしコンテンツの中には、人々の悲しさや苦しさを表現し、人々にイメージさせる作品も存在する。つまり、コンテンツの中に地域情報が盛り込まれることは、間接的に負のイメージを発信するリスクがあることを忘れてはいけない。例えば、福井県の東尋坊は、「火曜サスペンス劇場」(1981年から2005年放送)の中で、自殺や殺害の舞台となってきた。筆者は、2019年に東尋坊の遊覧船利用時に、ガイドさんが「火曜サスペンス劇場」のテーマ曲と共に殺害や自殺の名所として使用されることを明るく紹介していた。また、ドイツのアウシュヴィッツは、第二次世界大戦時に多くの犠牲者を出した事実に基づく様々なコンテンツが制作されている。福井県の東尋坊とドイツで使用される人々の悲しさや苦しさを同一視して比較はできない。しかし、コンテンツの作中に表現された人々の悲しさや苦しさに共感する人々がいる。さらに、作中の追体験を求めモデルとなった地域へ来訪する観光客がおり、その場合コンテンツが地域に与える「負のイメージ」は小さいといえる。

 2020年、世界中でコロナウイルスが猛威を振るっている。正式名称は、「2019-nCOV」とし、「コロナウイルス」と呼ばれている。発生地をウイルスの名称として発言している人々もいる。しかし、新興感染症には、地名や動物の名称を使用しないというルールがある。この背景には、かつて地名や動物の名称を病名としたときに、差別や偏見といった風評被害が発生したからである。このように、人々に負のイメージを与える内容については、将来にわたるリスクを鑑みながら取り決められているのである。

 コンテンツの中に地域情報が盛り込まれることは、「コンテンツツーリズム」や「聖地巡礼」を目的とした人々が訪れる可能性がある。ただし、コンテンツには、負のイメージを有する場合もあり間接的に地域へ悪影響を与えるリスクがある。それゆえ、「コンテンツツーリズム」や「聖地巡礼」による観光振興には、作品を構成する情報を基に、起こり得るリスクについても検討することが必要である。

安本氏

 
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