【観光学へのナビゲーター 10】入湯税と宿泊税の観光振興としての問題点 日本国際観光学会・温泉研究家 高橋祐次

  • 2019年9月3日

高橋祐次氏

 近年、訪日外国人観光客の増加により地方自治体の財政支出は拡大傾向にある。その中で、温泉地を抱える地方自治体においては、観光の資源となる法定目的税である入湯税に注目が当たっている。入湯税は、1957(昭和32)年に目的税になって以来、時代の要請もあり段階的に使途目的が追加されてきている。現在は徴収された財源は、4つの使途-「環境衛生施設の整備」「鉱泉源の保護管理施設の整備」「消防施設その他消防活動に必要な施設の整備」「観光振興(観光施設の整備を含む)」-に使われている。

 しかし、ほとんどの地方自治体は、目的税であるものの徴収された入湯税は、一般財源に繰り込まれており、「観光費」の一部として歳出されているようであるが、ホームページに詳細が記されていない。そのため、入湯税の使途比率が明確になっていないのが現状である。

 また、市町村合併により行政区域が拡大することで、従来、温泉地周辺で使用されていた入湯税が、温泉地には恩恵を受けない地域での「観光振興」の財源として使用されている事例も多い。そのことが、特別徴収義務者である温泉旅館・ホテル側から地方自治体に対して不満となって現れているのも事実である。

 入湯税を観光振興の主たる財源とする動きが進む中で、大都市において法定外目的税として「宿泊税」を導入する動きも活発化してきている。2002(平成32)年に東京都が導入を開始してから、2017(平成29)年に大阪府、2018(平成30)年に京都府が導入。直近では、石川県金沢市が2019(平成31)4月1日に導入を開始した。また、福岡県と福岡市が同時に宿泊税を導入する計画があり、福岡市での宿泊が「二重課税」とならないため、県税と市税に分けることで調整が行われている。

 一方で、「宿泊税」を導入する都道府県や市町村と「入湯税」を導入する市町村には、重複する地域も見受けられる。京都市においては、宿泊税導入が「二重課税」になるのではないかという意見に対して、検討委員会では、「二重課税とは、課税標準(税額計算に基礎となる金額又は数量)を同じくする場合を言うが、入湯税は入湯行為、宿泊税は宿泊行為に課税の根拠を見出すもの」として二重課税には当たらないとの見解もある。

 入湯税や宿泊税の導入が、その地域が余程魅力がないかぎり、近隣の宿泊施設に宿泊客が流れて行くという懸念もある。その一方、地域振興の公平性から見た場合、その地方自治体の温泉施設に入湯する者と宿泊施設に宿泊する者から徴収した財源だけで良いのかという議論もある。今後は、入域料的な公平性を持った徴収も考えられるが、徴収場所の設置や地域住民への対応についての問題点もあり、地域の観光振興のための財源については、「入湯税」「宿泊税」を含めた中で、新しい「観光税」の方向性についても考えていかなければならないと思う。


高橋祐次氏

 
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