【脱炭素でスマートな旅館 3 】脱炭素へのロードマップ(その1) 国際観光施設協会 エコ小委員会


 脱炭素を目指すには、まず給水と電気の「ムダ」使いを探すことから始めます。「ムダ」を探すためには、まず現在の使用量を記録して使用する目的と使用している場所を把握して検討する必要があります。

 当協会の調査によれば、給水使用量が多い温泉旅館は電気や重油・ガスの使用量も多い傾向にあります。つまり給水の使用量はエネルギーの使用状態を知る指標(バロメータ)と考えることができます。

 調査した温泉旅館の中で、エネルギーの管理状態が良いと考えられる温泉旅館の給水使用量は600リットル/人内外でしたが、一般家庭での水使用量はおおむね200リットル/人内外なので、温泉旅館では一般家庭の3倍の水を使っていることになります。

 温泉旅館の使用水量を、利用客が客室内や共用部のトイレ、大浴場の洗い場のシャワーや水栓などで直接使う直接使用量と、施設の清掃や散水、設備用水や浴槽水など施設の運営に使われる間接使用水に分類できますが、直接使用量は自動止水型の水栓やシャワーなど節水器具が使われるようになっているので、今以上の節水はサービスの低下につながる恐れがあるため、使用水量の削減は間接使用水が対象となります。

 まず、倉庫に眠っている帳簿類からコロナの影響を受けなかった2018年と2019年の毎月の水光熱使用量と利用客数を記録します。温泉旅館には日帰りの入浴や会食・宴会などの宿泊を伴わない利用客もいるので、日帰り利用客数を利用形態に応じて宿泊客数に換算して宿泊客数に加えて月間利用客数を算出します。

 日帰り利用客の宿泊客数への換算は、入浴のみの利用客は客数の10%、食事付き入浴や会食・宴会客に対しては客数の30%を宿泊客数として下記のごとく計算します。

 利用客数=宿泊客数+(日帰り入浴客数×0.1)+{(食事付入浴客数+会食客数+宴会客数)×0.3}

 水道、電気、油、ガス(=水光熱)の月間使用量は、請求書や領収書などから拾い出して記録してください。なお上水道の場合2カ月間の使用量が請求される場合が多いようですが、2カ月間の使用量を月間利用客数の割合で分割して月間使用量として記載します。

 上記から月間利用客1人当たりの使用量を計算して、図1のごとく折れ線グラフで表示して、使用量(リットル/人)が増量した原因を調べます。

 図1に示したG旅館の場合、浴槽水の入れ替え(換水)しか多量の水を使うことがないことから、温泉貯留槽を設置して深夜に浴槽への温泉供給を停止して温泉を貯留し、温泉のみで浴槽の換水を行うようにして、給水使用量を削減することができました。

 このように利用客1人当たりの使用量を把握することで、今まで気が付かなった「ムダ」を発見できます。

 また、使用水の増加要因が見当たらない場合には設備の運転方法や照明や換気扇など小型機器の消し忘れ、大浴槽の湯張り方法、食器の洗浄方法など使用量が増加する要因を検証することで「ムダ」を探すことができます。

 なお当協会では利用客数の計算と、月間使用量から自動的に利用客1人当たりの使用量を計算する「水光熱使用量データシート」を用意してありますので、データシートに記入して送付していただければ、削減対策など提案します。なお「水光熱使用量データシート」は当協会のホームページから入手するか当協会に請求していただければお送りします。

 (エコ・小委員会 ユニ設備設計会長・小川正晃)  

 
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