
岩塩プレートに載った鯛のお刺身
米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡トーランス市は、ロサンゼルスの中心部から約30キロメートル、ロサンゼルス国際空港へも車で約15分という便利な立地ながら、全米でも指折りの安全な街と言われる。そのため、同市に本社を構える大手日本企業も多い。そんなこの街で、日本人客のニーズに応えているのが「都ハイブリッドホテル」だ。
太陽光発電、省エネルギー照明器具や節水システムなどの最先端テクノロジーと、都ホテル伝統の「和」のおもてなしの心の融合が特徴の同ホテル。深めのバスタブと洗い場を設えた浴室や、温水洗浄付きトイレなど、客室にも日系ならではの配慮がある。
オマケにメインダイニングが和食店なので、朝食も和洋ブッフェがいただけるから、ご飯とお味噌汁でパワーチャージが可能。約180席を有するホテル内の「いせしまレストラン」には、ダイニングルーム、寿司バー、カクテルラウンジや、夏にはビアガーデンになるパティオもあり、用途に応じて楽しめる。
残念ながら、海外では「なんちゃって和食」を提供する店も多い。和食が世界遺産に登録されたのを受け、世界中で和食店が激増する中、料理人は外国人が9割を占めると言われ、中には一度も日本に行ったことがない寿司職人もいる。だから日本人から見ると「コレって何?」と思うような料理が、寿司としてまかり通ってしまうのだ。
政府も危機感を覚えたのか、昨年、農林水産省が「海外における日本料理の調理技能の認定に関するガイドライン」を定めた。これは日本料理に関する適切な知識・調理技能を修得した外国人料理人を育成するための試みである。
話を戻そう。同レストランでは、園田幸夫総料理長はじめ、きちんと日本人シェフが調理してくださる。それもそのはず、同ホテルのセールス&マーケティング・マネージャー柚原章氏は、和食の全米普及を目指し、日本政府の掲げる「農産物輸出額1兆円」という目標達成にも貢献している非営利団体「米国日系レストラン協会」の会頭なのだ。
うかがった折、久し振りの和食だったので、アレもコレも食べたいとリクエストしたわれわれに、総料理長は一皿のポーションを小さくして応えてくださった。きめ細やかなサービスがうれしい。
ポン酢のかかった和牛のタタキは軟らかジューシー。岩塩プレートに載った鯛のお刺身は、岩塩が余分な水分を吸って旨味が凝縮され、程よい塩味で超美味。鮪の中トロの素晴らしさにも、悶絶! 聞けば築地から仕入れていると言うが、仕入れがうまいから驚くほど高くはない。活アワビのお造りは、大好きな肝醤油が添えられ大感激。
北米の和食店は約2万5千軒以上にのぼり、その5分の1をカリフォルニアが占めているそうだ。それだけ和食店が多い場所で、ホンモノを提供してくださる影響力は大きい。米国和食業界を牽引する柚原会頭と園田総料理長に、熱いエールを送りたい。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
ポン酢のかかった和牛のタタキ
岩塩プレートに載った鯛のお刺身
鮪ブロック
活アワビのお造り