【竹内美樹の口福のおすそわけ 360】ニッポン生まれの洋食~その2~ ドリア 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹

  • 2021年4月1日

竹内氏

 この「ニッポン生まれの洋食」シリーズ、次回はもう少し先にしようと考えていたが、続けてご紹介しておきたい料理がある。

 おいしそうに焦げたチーズにスプーンを入れると、熱々の湯気が立ち上り、中からトロリとしたホワイトソースが顔を出す。その下にはバターライスが。具はエビだったりチキンだったりいろいろなバリエーションがあり、風味もさまざま。子供から大人まで大好きな料理の一つ、「ドリア」だ。

 ライス・グラタンとも呼ばれるドリア、グラタン同様、フランス発祥の料理だと思っていたが、実は前号のナポリタンと同じく、横浜の「ホテルニューグランド」生まれだったのだ!

 …と、その真相に迫る前に、グラタンについて。グラタン(Le gratin)とは、フランス語で「ひっ掻(か)く」という意味の「gratter」に由来するといわれる。失敗した焼き料理のおこげがおいしかったので、それを掻き取って食べたことから、表面に焦げ目をつける調理法や、焦げ目をつけた料理自体を「Le gratin」と呼ぶようになったとされる。その発祥はフランス、サヴォワ・ドーフィネ地方、正真正銘のフランス料理だ。

 さて、ドリアに話を戻そう。この料理を考案したのは、前号にも登場したホテルニューグランドの初代料理長サリー・ワイル氏だ。誕生について諸説あるナポリタンと違って、ドリアのワイル氏説に異論はないようだが、その理由としてまことしやかに流布されている、「ワイル氏がフランス料理のグラタンを、日本人に食べさせるために米を使ってアレンジした」という説は違うようだ。

 確かに、日本の主食であるご飯を使ったことで日本人にウケたのは事実だが、実際のキッカケは1人の外国人宿泊客。同ホテル公式サイトによれば、滞在中の銀行家から、体調が優れないので喉越しの良いものをとリクエストを受け、即興で創作したそうだ。

 調べてみると、バターライスに、当時はやりの小エビのクリーム煮を載せ、ベシャメルソースにチーズと卵黄を混ぜたソース・モルネーをかけ、さらにチーズを載せてオーブンで焼き上げたらしい。これが大好評で、「Shrimp Doria(エビと御飯の混合)」としてグランドメニューに掲載されて人気となり、同ホテルの名物料理の一つとして、現在も提供されている。

 筆者にとっては思い出の料理でもある。子供の頃三笠会館で、当時メニューにあった「鮑(あわび)のドリア」が大好きだった。本物のアワビの殻に入ったドリアで、貝殻の内側が虹色に輝くのが見たくて、残さず奇麗に食べたのを思い出す。

 以前ご紹介したシャリアピンステーキは、歯の不調を訴えたオペラ歌手のために作られたが、ドリア誕生の契機も似ている。誰かを思い、喜ばせたいという気持ちが新しい味を生み出すのだ。料理の原動力って、昔も今も変わらない。新商品考案時は、お客さまの笑顔を思い浮かべる。そんな当たり前のことを、改めて胸に刻んだ筆者である。

※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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