【竹内美樹の口福のおすそわけ 355】あんぽ柿 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹

  • 2021年2月26日

竹内氏

 冬においしい、ニッポンが誇るドライフルーツと言えば、干し柿。大きく分けて2種類あり、一つは外側が白い粉に覆われていて、その下は黒っぽく、ちょっぴり硬めの「枯露柿(ころがき)」。生柿の25~30%程度の水分になるまで乾燥させており、歯応えがあって甘味が強い。白い粉は、果糖とブドウ糖が結晶化した「柿霜(しそう)」と呼ばれる物で、砂糖がなかった時代には、貴重な甘味料だったそうだ。

 もう一つは、鮮やかなオレンジ色で、軟らかくジューシーな「あんぽ柿」。水分値が約50%と高く、ゼリー状のトロリとした半生食感が特徴だ。今回の主役はこの「あんぽ柿」である。

 生で食す「甘柿」が登場したのは鎌倉時代に入ってからと言われ、それまで日本には渋柿しかなかったようだ。先人の知恵で、干すことで渋抜きして食べていたワケだが、干すだけでは果実中のタンニンが酸化し黒変してしまうし、カビも生えてくる。

 ナゼあんぽ柿は黒くならずカビもないのか? ヒミツは、硫黄燻蒸(いおうくんじょう)だ。米カリフォルニアの干しブドウを参考に、柿を硫黄でいぶしてから干す製法を大正11年に開発したのが、現在も生産量日本一を誇る、あんぽ柿の発祥地福島県伊達地区。原料は、この地域で江戸時代から栽培されていた蜂屋柿(はちやがき)や平核無(ひらたねなし)。収穫後3~5日追熟させ、皮をむいてロープに吊るし硫黄燻蒸を行う。その後自然乾燥させるのだが、期間は何と約40日間、大玉だと55日も掛かるそうだ。盆地ゆえに昼夜の寒暖差が激しい気候と、半田山から吹き下ろしてくる風「半田おろし」が、この自然乾燥には欠かせないらしい。

 現在、出荷の最盛期。積雪の多い時期でもあるため、本来なら農閑期になるところだが、あんぽ柿のおかげで冬でも仕事があり、安定収入につながっていたという。だが、東日本大震災の後、原発事故の影響で生産自粛要請が続き、果実を廃棄するなど大打撃を受けた。苦労の末少しずつ再開し、本年度産はようやく事故前と同水準の生産量約1200トンとなる見通しだ。

 JA全農福島が展開する、あんぽ柿をより広く知ってもらうための取り組みの一環として、「ミクニマルノウチ」と共に、筆者が役員を務める「神田明神下みやび」も、3月中旬ごろまで二つのメニューをご提供させていただくことに。

 一つは、西京漬けにしたフォアグラを低温調理し、あんぽ柿と共に最中で挟んだ「あんぽ柿のフォアグラ最中」。あんぽ柿の甘味とフォアグラのうま味のハーモニーは絶妙で、そのまったり感と最中のサクサク感の対比も楽しい。もう1品は「あんぽ柿の雪窓」。蒸した百合根をクリームチーズと合わせ、あんぽ柿で巻いた物。デザートにはモチロン、お酒にも合う。

 この原稿を書き始めた折、福島県沖で地震が発生、産地の伊達地区は最大震度6強を記録した。被災された方にお見舞い申し上げると共に、せっかく再開したあんぽ柿の出荷に大きな影響が出ないことを祈る。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

     
 
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