【竹内美樹の口福のおすそわけ 348】串揚げ?串カツ?~後編~ 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹


 串揚げと串カツって違うの?というギモンを深掘りしてみたら、ちょっとした違いを発見できた。

 まずは、地域による違い。言うまでもないが、串カツは大阪名物として知られる。その発祥は大阪新世界で、1929年創業「だるま」の女将が、近隣の日雇い労働者のために考案したとされる。仕事の合間に時間を掛けずに食べられるよう、一口大の食材を串に刺してフィンガーフードにした。厚めの衣を油で揚げればお腹にたまり、量の割に安価で済ませられる。

 大阪の串カツといえば「2度漬け禁止」ルールが有名。テーブル備え付けのステンレス容器にソースが入っており、他人と共用するワケだから、衛生上当然ともいえる。かじってむき出しになったネタから出る肉汁などで、ソースの味が変わるのも防いでいる。

 ウスターソースをベースにしょうゆや酢などを入れたオリジナルソースに、串カツをドボッと漬ける。1度で足りなければ、無料提供されるザク切りキャベツでソースをかける。この大阪スタイルは、ほとんど同店で生まれたとされている。

 関東では串揚げと呼ばれ、シャバいソース以外にも、からしやタルタルソース、塩、ごまダレなど、いろいろなタレが銘々に供される。パン粉のサイズ感も違う。串カツは「カツ」と言うだけあってパン粉が比較的粗いが、串揚げは細かくひいたパン粉を使用している。

 ネタの違いもある。串カツは、エビ、牛肉、豚肉、レンコンなど素材のままだ。一方、串揚げは、複数の食材が組み合わせてあることが多い。前号の「依知川」でも、エビはしそ巻きだし、レンコンもエビのすり身入りだ。

 「大阪伝統の味」を標榜(ひょうぼう)し大衆路線を打ち出す「串カツ田中」は、東京で創業し関西に逆輸入された形。昨年東証1部上場を果たし、250店舗出店を達成した。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの同社を脅かす存在といわれるのが、同じく昨年東証一部に上場したフジオフードグループの「串家物語」で、国内111、海外3店舗を展開している。

 同店は、串揚げの食べ放題ビュッフェ形式。しかも、テーブルに備え付けてあるのはソースでなくフライヤー。自分で揚げて食べるのだ。大阪に本社を置く同社、約30種類といわれるネタはやはり食材単品が多い大阪スタイルだが、ソースは甘口・辛口、チーズソースやポン酢なども。サラダやスープ、パスタ、カレーにスイーツまであり、まさにボーダレス。

 両社共、ファミリー層をうまく取り込んだことが成功の秘訣といわれるが、ディナー営業のみの大人の店「依知川」も、人気で最近姉妹店が増えた。つまりは業態でなく、料理自体に魅力があるのだろう。高温の油で揚げると、衣でガードされ、中は一気に蒸されてしっとり軟らか。肉汁なども逃げずジューシーだ。衣は水分が蒸発して油と入れ替わるからカリッと香ばしく、独特の風味もプラスされる。あぁ、だからおいしいのよね! 串揚げ、また食べに行こうっと♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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