子どもから大人まで大好きなメニューの一つ、唐揚げ。お弁当のおかず人気ランキングでも、必ず上位に入っている。呑兵衛(のんべえ)にも人気が高い。2013年に登場したサントリーの「ハイ&カラ」キャンペーンでハイボールを飲みながら唐揚げを食べるのがトレンドとなり、今やこのスタイルは外食でも家飲みでも定着。ハイボールと唐揚げに特化した専門店もある。
現在、そんな唐揚げ専門店が空前のブーム。すかいらーくグループの「から好し」、吉野家ホールディングスの「鶏千」、ワタミの「から揚げの天才」など、2017年ごろから大手が続々と参入。ご当地唐揚げ専門店なども含め、大きな市場ができているのだ。
昨年消費税が引き上げられ外食は10%となったが、8%の軽減税率が適用される持ち帰り可能なメニューを増やす傾向があったといわれる。そこへこのコロナ禍が、さらなる追い風となった。昨年飲食大手のGlobridgeがネット宅配専門の唐揚げ店「東京唐揚げ専門店あげたて」を始めたが、今年5月には中部、6月には関西圏にも進出を果たし、8月現在には全国で100店舗を超える急成長を遂げている。
こうしたテイクアウトを含む外食産業の唐揚げ市場は、1千億円以上に達する見込みといわれる。巣ごもり生活の中「自炊疲れ」からのニーズが増えているのだ。「日本唐揚協会」によれば、2009年ごろから始まった第2次唐揚げブームが、終息することなく今なお続いているという。じゃあ、第1次っていつごろ?
…というワケで、日本における唐揚げの歴史を調べてみた。江戸時代にはすでに存在したとされる唐揚げだが、実はその発祥についてはハッキリ分かっていない。来歴をたどれるのは、1932年に東京銀座にある現三笠会館の支店が飲食店で初めて唐揚げを提供して以降のこと。当時は鶏肉が高価だったため、唐揚げも高級料理であった。
唐揚げが一般的になったのは、国の主導で欧米からブロイラーを導入し、養鶏場が造られ、鶏肉が廉価になってから。また、冷蔵庫の普及も家庭での鶏肉料理を身近なものにした。第1次唐揚げブームは、その頃つまり1963~67年とされている。唐揚げを看板メニューにする飲食店が急増し、北海道の「ザンギ」などご当地唐揚げも登場した。
そして2009年、養鶏場の多い大分県から唐揚げ専門店2軒が東京に出店したことをキッカケに第2次唐揚げブームが到来。メディアがこぞって紹介した上、時代背景もあった。前年に起きたリーマン・ショックで節約志向が強くなり、人々が外食より内食や中食にシフトした。また2010年には口蹄疫問題が勃発。消費者の牛、豚肉離れが鶏肉需要を喚起した。
専門店の唐揚げの多くはサイズが大きく、しっかり味が付いていながら薄衣なのが特徴。サックリした食感の中から肉汁がジュワ~っとあふれてきたら、もう堪りません! 次号も唐揚げ、お楽しみに♪
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。