【竹内美樹の口福のおすそわけ 304】おむすび物語 その1 おむすび or おにぎり? 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹

  • 2020年1月24日

 今年は子年。実はネズミって、縁起の良い動物なのだ。火事や地震が起きる前に察知して逃げる様子から、未来を見通し、家を守ると言われる。また、古くから大黒天の使いと考えられ、五穀豊穣や商売繁盛をもたらすとされてきた。

 「古事記」にも、焼き討ちにあった大国主命(おおくにぬしのみこと)が、ネズミに助けられる場面がある。諸説あるが、仏教由来の大黒天と日本の神大国主命が、神仏習合により大黒様として信仰されるようになって、米俵の上に立つ大黒様にネズミが従う絵画や像が頻出した。

 大国主命は、ネズミに教えられた穴に潜んで難を逃れたが、穴の中のネズミの世界を描いた昔話がある。「おむすびころりん」だ。いくつかのパターンが語り継がれているが、およそこんなあらすじ。山でおじいさんがおむすびを落としてしまい、転がって木の根元の穴に入ったので中をのぞいたところ、そこはネズミの世界。おむすびの御礼にと大小のつづらを差し出されたので小さなつづらを持ち帰ると、中から財宝が。それを聞いた隣のおじいさんもネズミの穴に出掛け、大小両方のつづらを強奪しようとし、逆にネズミたちの反撃に遭うという話。

 ネズミたちが「おむすびころりんうれしいな」と歌う一節があるが、「おにぎり」ではなく「おむすび」だ。ニッポンのソウルフードであり、元祖フィンガーフードともいえる食べ物なのに、何と呼ぶか意見が分かれている。「握り飯」が「おにぎり」に変化し、その女房詞(にょうぼうことば)が「おむすび」だという説や、西日本がおにぎりで東日本がおむすびという説などさまざま。だが1978年にセブンイレブンが、パリッとしたのりを食べる直前に巻く「パリッコフィルム」を考案、主力商品になると、その呼称「おにぎり」が主流になった。全国のセブンで、年間17億個も売れているのだから当然だ。

 1986年には、当時の食糧庁が「ふるさとおにぎり百選」なるものを選定。百選とはいえ132点が選定されていることからも、それぞれの地域の食文化に根差したおにぎりが存在することが分かる。こちらも呼称は「おにぎり」だ。
 最近ではこんなふうに「おにぎり」が優勢だが、筆者はどちらかというと「おむすび」派。母親が愛情を込めて作るなら、握るより結ぶと言う方がしっくり来る気がする。そういえばセブンでも、家庭で作ったイメージがウリの直巻きタイプのネーミングは「直巻きおむすび」だ。読者の皆さまはいかがだろうか?

 実は、1月17日は「おむすびの日」だ。1995年に発生した阪神・淡路大震災で、ボランティアによるおむすびの炊き出しに被災者が励まされたことを忘れないようにと制定された。そして何と、6月18日は「おにぎりの日」。日本最古のおにぎりではないかといわれる、約2千年前の炭化米塊が石川県で出土した日である。いやぁ、コレも「おむすび」「おにぎり」の両方があったのねとビックリ!恐るべし、おむすび! 続きは次号にて!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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