【竹内美樹の口福のおすそわけ 303】年越し寿司 宿泊料飲施設ジャーナリスト 竹内美樹

  • 2020年1月6日

 年末札幌に行くと、店先に「年越し寿司(ずし)ご予約承り中」といったポスターが貼り出されているのをよく見かける。年越しと言えばお蕎麦(そば)でしょ、と関東人の筆者は思うが、札幌の知人に尋ねてみたら、大みそかには必ず握り寿司を食べる習慣があるのだと言う。

 そもそも年越し蕎麦は、江戸時代に定着したとされる習慣。その由来は諸説あるが、蕎麦が細く長く伸びることから延命・長寿を願ったものだという説と、他の麺類より切れやすいから今年1年の災厄や借財を断ち切るための縁起担ぎという説が有力だ。だが、北海道などの年越し寿司は、食す理由が少々違う。

 お正月には、歳神様をお迎えして年を取るという意味がある。例えば門松は、家に幸をもたらす歳神様に、迷わずいらしていただくための目印であり、鏡餅は歳神様が宿る依代である。そしておせち料理は歳神様へのお供え物で、これを食べることで神様からパワーを分けていただけると考えられていた。祝い箸が、両端が細い両口箸なのも、この「神人共食」の考えに基づいている。

 おせち料理を、大みそかに食す地域がある。昔は日没によって1日が始まると考えられていたので、大みそかの日没をもってお正月が始まることになる。だから、かつては大みそかの晩に年取りの儀式として、日常ではぜいたくとされるものを「年取り膳」として食す習慣があったのだ。その豪華なお食事こそおせち料理であり、年越し寿司である。

 「年取り膳」で白飯と「年取り魚」を食す地域もある。代表選手は、東日本がサケで西日本はブリ。サケは「栄える」に通じるとされ、ブリは出世魚ということもあり、共に縁起が良いとされる。

 さて、我田引水だが筆者が商品開発に関わった「笹一葉(登録商標)」というお寿司がある。笹の葉1枚に包んだ一口寿司で、このタイプに多い押し寿司ではなく、江戸前握りを笹に包んだイメージ。神田明神様から「明神名物」を名乗るお許しもいただき、製造販売元「神田明神下みやび」の人気商品となっている。

 この「笹一葉」、笹の葉の抗菌効果とシャリのお酢の防腐効果で、通常より日持ちする。元々江戸前寿司は、冷蔵技術のない江戸時代に生まれたため、ネタにも日持ちさせる工夫がある。「笹一葉」も生のネタを使わず、光り物を酢〆(じめ)にしたり、穴子を煮たりといったいわゆる「仕事」を施すことで、常温で48時間の消費期限を実現。さらにお米屋さんの協力を得て、冷蔵しても硬くならないシャリを開発、冷蔵で72時間の保存が可能になったのだ。

 これってかなり画期的なことだと思う。クール便で全国発送だってできるのだ。恵方巻は関西の習慣だったそうだが、コンビニが仕掛けて全国に広まったという。年越し寿司も全国区にならないかなぁ? 「笹一葉」ピッタリなのに。

 それはさておき、神を敬う日本のよき習慣を、大切にしていきたいものだ。2020年も、どうぞよろしくお願い致します!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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